実質的支配者

外国資本による不動産取得にかかる動向

外国資本による不動産取得の現状と今後の動向を解説します。首都圏マンションの価格高騰や非居住保有の増加に対し、英・カナダ・シンガポールの規制事例をはじめ、国の安全保障提言や実質的支配者情報の把握など、金融機関が押さえるべき重要ポイントをまとめました。


外国資本による不動産取得にかかる動向については、このブログでも、過去、何度か取り上げておりますが、その現在地と今後の動向について考えていきたいと思います。

目次

・都市部における不動産取得の動向

・諸外国の事例

・日本国内における動き

・まとめ

 

都市部における不動産取得の動向

不動産経済研究所の発表によると、首都圏の1都3県(神奈川、千葉、埼玉)の新築分譲マンションの平均価格が、1億135万円と過去最高を更新し、上半期として初めて1億円を突破したとのことです。新築分譲マンション市場においては、もはや「万ション」ではなく「億ション」が主流となる時代に突入したとも言えるのではないでしょうか。背景には、建築費・人件費、用地取得費の上昇等、様々な要因があげられていますが、その一つに、都心のタワーマンションを投資目的で取得する動きが活発化も指摘されています。

こうした中、日本経済新聞の調査では、都心部のタワーマンション最上階住戸の約半数で所有者の登記住所が物件所在地と一致しておらず、実際に居住していない投資目的の保有が相当数存在する可能性がじられました。非居住者の増加は、所有者が海外在住であったり、法人名義で取得されていたりする場合、単に実需を圧迫するだけでなく、実際の所有者や意思決定者の把握が困難になり、マンションの管理水準や資産価値にも悪影響を及ぼす懸念がある切実な課題と考えます。

 

諸外国の事例

諸外国においては、外国資本の不動産取得に限らず、投資目的での取得を抑制する様々な取り組みがなされています。

① 英国:海外法人による不動産保有に実質的支配者の開示を義務化
英国は2022年に「Register of Overseas Entities(海外法人登録制度)」を導入しました。海外法人が英国の不動産を取得・保有する場合、最終的な実質的支配者を登録しなければなりません。開示しない場合は、不動産の売買や譲渡に制限がかかり、罰則もあります。

② カナダ:実質的所有者登録制度を整備
カナダでは、マネーロンダリング対策として企業の実質的所有者の登録制度を導入していますが、一部の州では、「土地保有者透明性登録簿(Land Owner Transparency Registry)」が導入され、不動産の背後にいる実質的所有者の把握を進めています。

③ シンガポール:外国人の住宅取得に高率課税
シンガポールは透明化だけでなく、投機抑制策も徹底しています。外国人が住宅を購入する場合、追加印紙税(ABSD)を課し、投資需要を抑制しています。制度の目的は、投資需要を抑え、居住目的の住宅取得を優先することです。

 

 

日本国内における動き

6月9日付の外国人政策本部「第2次提言」において、以下の提言が取りまとめられています。

【土地等の取得・利用・管理ルール】
  • 外国人であるか否かは問わず懸念のある者による安全保障上の懸念のある地域等の土地等取得の規制を検討
  • 投機的取引抑制のための民間の取組、海外制度の調査等を踏まえ、取得規制等の適切なマンション価格高騰対策の検討

 【土地所有等情報の更なる透明性向上】

・疑わしい取引の届出に関する「チェックリスト」に暗号資産を用いた不動産取引を追加し、宅建業者に周知徹底
・法人の実質的支配者情報の把握・登録等の法制度を整備し、土地等所有者の実態把握にも活用

興味深いのは、この問題を外国資本による不動産取得と捉えるのではなく、国籍を問わず安全保障上の懸念のある不動産取得として捉え、最終的な受益者に基づき対策を行っていく点であり、その中で実質的支配者情報の確認は、有効な手段の一つとしてあげられています。

 

 

まとめ

不動産が金融商品として扱われ点は、1980年代後半のバブル期を彷彿されるものがあります。当時において、「誰が使うか」ではなく「誰かが高く買う」ことが目的化された結果、本来「住むための資産」が、値上がりを期待する「投機のための資産」に変容しました。しかしながら当時と大きく違うのは、円安による相対的割安感からの外国資本の流入の影響が大きくなっていることです。これ自体、必ずしも悪いことではないものの、重要なのは、直接的・間接的に関わらず、「誰が最終的な所有者なのか、その目的は何か」を正しく把握することであり、実質的支配者情報の確認は、今後更なる重要性を増すものと考えます。

 

 

 

 

 

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