近年の仮想通貨やNFTの流行に伴い注目されている組織形態である「DAO」。本記事ではDAOの特徴や日本国内の法規制動向、そしてDAOに潜むマネロンリスクについて解説します。
一般的に、DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、中央集権的なリーダーが存在せず、分散した参加者が自律的に運営する組織を意味します。「分散型自律組織」と訳されることもあります。
DAOの組織運営はブロックチェーン技術を基盤としており、資金管理や意思決定における透明性が高いことが特徴です。
【DAOの活用が効果的な分野】
日本国内においては、従来の営利目的組織(株式会社等)では資金調達やステークホルダーとの調整等の課題により解決が難しいとされていた「地方創生分野」での活用が注目されています。
【DAOの活動における制約】
DAOは新しい組織形態であり、日本の法律上、DAOそのものは法人として認められていません。つまり許認可が必要な業務を遂行できない、契約の主体として認められない、法人口座を開設できない、など活動を行う上で複数の制約があります。
2024年4月1日公布4月22日施行の内閣府令改正(金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令)により、一定の条件を満たす場合は金商法事業者登録が不要で、合同会社の業務執行社員によるトークン取得の勧誘(資金調達)や分配が可能となりました。平易に言えば、合同会社型DAOの活動が規制緩和されました。
【合同会社型DAOを設立するメリット】
・法人名義で銀行口座開設、契約締結、商標登録・特許出願等が可能
・スマートコントラクトを定款等に組み込むことで、「参加者の貢献に応じてトークン付与→議決参加」というインセンティブを明確に設定可能
実際に合同会社型DAOを設立する際には、日本DAO協会が公表するガイドラインや定款雛形を参照すると良いと思われます。
なお、日本DAO協会は一般社団法人ですが、権限付与や意思決定をDAOで運営している点で大変興味深い試みだといえます。
一般的な合同会社と同様に、合同会社型DAOにおいても下記フローチャートに沿って実質的支配者を判断します。
金融機関の目線に立つと、当該合同会社の定款を確認することで、①や②の存在有無を把握可能ですが、③についてはDAO固有のリスクを検討する必要があります。
なお、想定される次の2つのケースのうち今回はAを対象とします。
A:悪意のある個人/集団が合同会社型DAOを設立した場合→金融機関にとってのマネロンリスク
B:真っ当な合同会社型DAOの運営に、意図せず悪意のある個人/集団が関与した場合→当該合同会社にとってのガバナンスリスク
合同会社型DAOの特性として、ガバナンストークン(DAOの意思決定における投票権)を多数の個人が匿名で取得できる点が挙げられます。金融機関としてはリスクを特定するために例えば次の点を確認することが望ましいと考えられます。
・一部の個人に議決影響力が偏っていないか?それら個人は実質的支配者に該当しうるか?
・(定款上、委任投票が認められる場合)過去の委任投票において一部の個人に委任が集中していないか?
・ガバナンストークン保持者の中に、反社会的勢力が潜んでいないか?
具体的には定款や社員名簿の確認に留まらず、ガバナンストークン保持者(氏名ではなくウォレットアドレスの一覧の可能性も)や過去の投票記録の確認が必要となる可能性があります。
合同会社型DAOは新しい組織形態であり、法整備はまだ緒についたばかりです。金融機関の実務担当者におかれては、合同会社型DAOにおけるマネロンリスクやKYCプロセスの整備についても、今のうちから検討することが重要です。