FCPAのガイドライン(Resource Guide)では、M&AにおけるFCPAリスクの低減について、実践的なガイダンスを提供しています。
DOJ(米国司法省)とSEC(米国証券取引委員会)は、M&Aにおいて企業に以下のことを求めています。
買収企業が、適切なコンプライアンス管理ができている前提となっているところは、注意が必要かと思います。その上で、買収するときには、被買収企業のコンプライアンス管理の状況を調査し、違反がないかを確認し、買収後は、買収企業のコンプライアンス行動規範、ポリシー、手順などを被買収企業にいち早く適用することが重要となっています。
買収企業・後継企業の責任については、以下のように書かれています。
「多くの場合、DOJとSECは、特に買収企業が違反を発見し、タイムリーに是正した場合、または政府による先行企業(被買収企業)の調査が買収により先行して行われていた場合は、買収企業ではなく、先行企業に対する執行措置を追求している。」
買収企業は、被買収企業の買収以前の違反については、適切な対応を取ることにより、責任は問われないとなっています。
具体的に、以下のように事例が紹介されています。
「このようなケースの1つで、オハイオ州に本社を置くヘルスケア会社の買収対象先のデューデリジェンスにより、対象の子会社によるFCPA違反が明らかになり、合併が完了する前に、子会社の違反をDOJおよびSECに開示した。子会社は有罪を認め、200万ドルの刑事罰金を払いました。被買収企業は、500,000ドルの民事罰金を支払いSECと和解。買収企業に対して後継責任は求められませんでした。」
「DOJとSECはまた、買収後にFCPA違反が発見された前身の企業に対してのみ訴訟を起こした。たとえば、フロリダに拠点を置く米国の会社が買収後のデューデリジェンスで、買収した電気通信会社(米国内企業)が外国の贈収賄に従事していたことを発見した場合、後継企業は、FCPA違反をDOJに開示しました。その後、内部調査を実施し、DOJに全面的に協力し、買収した会社の上級管理職を解雇するなど、適切な是正措置を講じました。後継者に対する執行措置は取られなかったが、前任会社はFCPA違反に対して有罪を認め、200万ドルの罰金を支払うことに同意した。3名の上級管理職は懲役刑を受けている。」
「コネチカット州に拠点を置く会社が買収しようとしたカリフォルニア州の会社によるFCPA違反を発見した後、両社はDOJとSECにその行為を自発的に開示しました。前身の会社は、80万ドルの金銭的ペナルティを含むDOJとの不起訴契約を通じて刑事責任を解決し、SECと合計110万ドルの違法行為、判決前利息、および民事罰金を支払うことで和解しました。後継企業は、買収を進め、DOJとの間で個別に不起訴契約を締結しました。この協定では、とりわけ、前任企業の不起訴契約の完全な履行を確保することに合意しました。この合意により、後継者はFCPAの責任に関して確実性を得ることができました。重要なのは、後継会社の自発的な開示、適切なデューデリジェンス、および効果的なコンプライアンスプログラムの実施は、買収前のデューデリジェンスが不可能な場合に、被買収企業の買収後の対応が、罰則執行の可能性を減少させる可能性があることです。」
このように、企業買収を行う場合は、可能な限りの事前の調査、そして、買収後は、いち早く自社の基準に合わせたコンプライアンスチェックを買収先企業に行うことが重要になってきます。そして、「自社が適切なコンプライアンス管理ができている」ことが前提になっている点、注意が必要です。買収を行う前に自社のコンプライアンス態勢をチェックしてみてください。
※ガイドラインの内容は、Compliance Data Labで仮訳したものです。和訳はあくまでも便宜的なものとして利用し、適宜、英文の原文を参照していただくようお願いします。