(※2024/09/27に加筆しております)
2024年1月30日に国際NGOの国際透明性機構=Transparency International (TI)が、2023年の腐敗認識指数(CPI)を公表しました。今号ではアジア・パシフィック地域のCPIの動向を見ていきます。
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腐敗認識指数(以下CPI)は、国際NGOの国際透明性機構 (以下TI)が世界銀行や世界経済フォーラムなどを含む様々な信頼ある機関から情報収集し、各国の公共部門がどの程度腐敗していると認識されているかを測定し、算出したスコアです。180の国・地域の腐敗レベルを0-100のスコアで表しています(0が最も腐敗が多く100が最も少ない)。
TIによると、2023年においてもアジア・パシフィック地域では、腐敗防止において進展が見られなかったとのことです。5年連続で、この地域の平均CPIスコアは100点満点中45点と低迷しており、71%の国が地域平均と世界平均を下回っています。
アジア・パシフィック地域のCPI上位は、ニュージーランド(85)、シンガポール(83)、オーストラリア(75)、香港(75)、日本(73)、ブータン(68)、台湾(67)、韓国(63)となっています。指数の最下位層には、北朝鮮(17)やミャンマー(20)など権威主義体制をとる脆弱な国家が含まれており、ミャンマーは2017年から10ポイントも大幅に低下しています。アフガニスタン(20)は、史上最悪の人道危機に直面し続けています。(カッコ内の数字はCPI)
TIのレポートの中で、アジア・パシフィック各国の状況を以下のように説明しています。
アフガニスタン(20):史上最悪の人道危機に直面し続けている。
パキスタン(29)スリランカ(34):それぞれの債務負担とそれに伴う政治的不安定に苦しんでいる。しかし、両国には強力な司法の監視機能があり、それが政府を抑制するのに役立っている。
インド(39):スコアの変動が小さいため、重大な変化について確固とした結論は出せない。しかし、選挙を前に、インドでは "基本的権利に対する重大な脅威 "となりうる法案の可決など、市民的活動の場がさらに狭まると見られている。
バングラデシュ(24):後発開発途上国(LDC)の地位から脱却し、経済成長が貧困の継続的な減少や 生活環境の改善を支える中、報道機関に対する弾圧が続き、政府機関に関する情報の流れが妨げられている。
マレーシア(50):過去10年間にわたり重大事件を解決してきた腐敗防止委員会とともに、健全な選挙を実施し、CPIは地域平均を上回っている。
インドネシア(34):民主主義が後退するなか、著しく権限を奪われた腐敗防止機関KPKが、すぐにかつての権限を取り戻すことが許されるのか、それともいわゆる張子の虎になる運命にあるのか、依然として不透明である。
ベトナム(41):注目度の高い腐敗防止キャンペーンが、批判的な声の継続的な排除によって妨害されており、こうした努力の持続可能性を妨げている。
フィリピン(34)タイ(35):依然として低水準にある。
中国(42):積極的な腐敗防止取り締まりで注目を集め、過去10年間で370万人以上の公務員を汚職で処罰した。
(「CPI 2023 FOR ASIA PACIFIC: REGIONAL STAGNATION MARKED BY INADEQUATE DELIVERY OF ANTI-CORRUPTION COMMITMENTS」より抜粋、筆者による翻訳)
FATFでは、高リスク、強化モニタリング対象国・地域や、各国の相互審査レポートを公開し、マネロン等のリスク評価の参考情報を提供していますが、外国PEPs(公的要人)が高リスクとされているように、CPIの情報もマネロン等リスクの評価に非常に有効と考えます。是非、リスクの判断の1つの指標としてCPIを活用してみてください。
先述の通り、中国の腐敗認識指数(CPI)は平均の43点を下回る結果となりました。今後、ビジネスパートナーやサプライチェーンの観点から、中国との関係は避けられないものの、適切な対応が求められます。さまざまなリスクを踏まえつつ、どのように対応していくべきか、具体的な対策を検討していきます。
贈収賄や汚職が中国でのビジネス取引に関して重大なリスクとなります。特に、地方政府や公的機関との取引では、透明性が欠けている可能性があり、予期しない要求や不正行為が発生するリスクが高いです。外国企業は、贈収賄防止法(FCPAなど)に違反する可能性があるため、徹底した監視が必要です。
中国の企業がどのようにサプライチェーンを管理しているかが不透明な場合があります。下請け業者や関連会社が不正な行為を行うリスクを排除するため、取引先や工場の透明性を高めるための監査や追跡が必要です。供給元が非合法な活動に関与している場合、貴社のブランドに影響を与える可能性もあります。
中国の規制は急速に変わることがあり、その結果、法的なリスクが高まります。特に環境規制や労働法の遵守に対する取り締まりが厳しくなっているため、取引先がこれらの規制に違反している場合、罰金や取引停止などのリスクが生じます。また、知的財産権の侵害やビジネスパートナーによる技術の不正流用もリスクの一つです。
一部の中国企業は、劣悪な労働環境や人権侵害に関与していることが報告されています。これにより、取引先が世界的なスキャンダルに発展するリスクがあります。特に強制労働の疑いがかかる企業との取引は、グローバルな法規制や倫理的な問題を引き起こす可能性があります。
中国は高度なサイバー攻撃の温床であることが指摘されています。取引先がサイバーセキュリティ対策に疎ければ、貴社のデータが攻撃されるリスクも高まります。特に、ビジネス機密や取引データが流出するリスクを防ぐために、サイバーセキュリティの強化が必須です。
中国企業との取引では、資金洗浄や不正な資金の流れに関与するリスクもあります。特に金融システムが複雑である場合、合法な取引が不正資金の洗浄に利用される危険性があります。
次回の私のブログでは、2024年1月1日に開始された米国金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の実質的支配者報告制度についてご紹介します。
著者紹介
コンプライアンス・データラボ株式会社
代表取締役、CEO
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)
富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。
・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)
・公認情報システム監査人(CISA)
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)
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