腐敗認識指数(CPI)

2024年1月公表:2023年腐敗認識指数(CPI) について(2)


 

20241月30日に国際NGOの国際透明性機構=Transparency International (TI)が、2023年の腐敗認識指数(CPI)を公表しました。今号ではアジア・パシフィック地域のCPIの動向を見ていきます。 

 

図1: CPI_REGIONAL OVERVIEW 

 

https://www.transparency.org/en/news/cpi-2023-asia-pacific-stagnation-due-to-inadequate-anti-corruption-commitments

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腐敗認識指数(CPI)とは 

腐敗認識指数(以下CPIは、国際NGOの国際透明性機構 (以下TI)が世界銀行や世界経済フォーラムなどを含む様々な信頼ある機関から情報収集し、各国の公共部門がどの程度腐敗していると認識されているかを測定し、算出したスコアです。180の国・地域の腐敗レベルを0-100のスコアで表しています(0が最も腐敗が多く100が最も少ない)。   

 

CPI2023のアジア・パシフィック地域の動向 

TIによると、2023年においてもアジア・パシフィック地域では、腐敗防止において進展が見られなかったとのことです。5年連続で、この地域の平均CPIスコアは100点満点中45点と低迷しており、71%の国が地域平均と世界平均を下回っています。 

アジア・パシフィック地域のCPI上位は、ニュージーランド(85)、シンガポール(83)、オーストラリア(75)、香港(75)、日本(73)、ブータン(68)、台湾(67)、韓国(63)となっています。指数の最下位層には、北朝鮮(17)やミャンマー(20)など権威主義体制をとる脆弱な国家が含まれており、ミャンマーは2017年から10ポイントも大幅に低下しています。アフガニスタン(20)は、史上最悪の人道危機に直面し続けています。(カッコ内の数字はCPI 

 

アジア・パシフィック各国の状況 

TIのレポートの中で、アジア・パシフィック各国の状況を以下のように説明しています。 

アフガニスタン(20):史上最悪の人道危機に直面し続けている。 

パキスタン(29)スリランカ(34):それぞれの債務負担とそれに伴う政治的不安定に苦しんでいる。しかし、両国には強力な司法の監視機能があり、それが政府を抑制するのに役立っている。 

インド(39):スコアの変動が小さいため、重大な変化について確固とした結論は出せない。しかし、選挙を前に、インドでは "基本的権利に対する重大な脅威 "となりうる法案の可決など、市民的活動の場がさらに狭まると見られている。 

バングラデシュ(24):後発開発途上国(LDC)の地位から脱却し、経済成長が貧困の継続的な減少や 生活環境の改善を支える中、報道機関に対する弾圧が続き、政府機関に関する情報の流れが妨げられている。 

マレーシア(50):過去10年間にわたり重大事件を解決してきた腐敗防止委員会とともに、健全な選挙を実施し、CPIは地域平均を上回っている。 

インドネシア(34):民主主義が後退するなか、著しく権限を奪われた腐敗防止機関KPKが、すぐにかつての権限を取り戻すことが許されるのか、それともいわゆる張子の虎になる運命にあるのか、依然として不透明である。 

ベトナム(41):注目度の高い腐敗防止キャンペーンが、批判的な声の継続的な排除によって妨害されており、こうした努力の持続可能性を妨げている。 

フィリピン(34)タイ(35):依然として低水準にある。 

中国(42):積極的な腐敗防止取り締まりで注目を集め、過去10年間で370万人以上の公務員を汚職で処罰した。 

(「CPI 2023 FOR ASIA PACIFIC: REGIONAL STAGNATION MARKED BY INADEQUATE DELIVERY OF ANTI-CORRUPTION COMMITMENTS」より抜粋、筆者による翻訳) 

FATFでは、高リスク、強化モニタリング対象国・地域や、各国の相互審査レポートを公開し、マネロン等のリスク評価の参考情報を提供していますが、外国PEPs(公的要人)が高リスクとされているように、CPIの情報もマネロン等リスクの評価に非常に有効と考えます。是非、リスクの判断の1つの指標としてCPIを活用してみてください。 

次回の私のブログでは、2024年1月1日に開始された米国金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の実質的支配者報告制度についてご紹介します。 

 

著者紹介

hiro

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

 富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)  

 

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