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2025年2月公表:2024年腐敗認識指数(CPI) について

2025年2月11日に国際NGOの国際透明性機構 (TI)が、2024年の腐敗認識指数(CPI)を公表しました。2024年の概要や腐敗認識指数変動の様子、国際社会への影響を報告します。また、世界に拡がる取引先やサプライチェーンのリスク評価の重要性を、CPIの観点から考えます。


2025年2月11日に国際NGOの国際透明性機構=Transparency International (TI)が、2024年の腐敗認識指数(CPI)を公表しました。今号では、その内容を見ていきます。

CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX2024 

図1: CORRUPTION PERCEPTIONS INDEX2024 
https://www.transparency.org/en/cpi/2024 
by Transparency International is licensed under CC-BY-ND 4.0  

 

目次

- 腐敗認識指数(CPI)とは

- CPI2024の全体概要

- 最上位と最下位の国々

- 2012年以降のCPIの変動

- 腐敗と気候危機 

- アジア地域での腐敗状況

- 日本の腐敗状況

- まとめ

 

 

腐敗認識指数(CPI)とは 

腐敗認識指数(以下CPI)は、国際NGOの国際透明性機構 (以下TI)が世界銀行や世界経済フォーラムなどを含む様々な信頼ある機関から情報収集し、各国の公共部門がどの程度腐敗していると認識されているかを測定し、算出したスコアです。180の国・地域の腐敗レベルを0-100のスコアで表しています(0が最も腐敗が多く100が最も少ない)。    

 

 

CPI2024の全体概要 

2025年2月11日にTIが発表したCPI2024では、腐敗と気候変動の関係に対して警告しています。グローバルで気候変動による影響が懸念される中、TIは「十分な透明性と説明責任のメカニズムの欠如は、気候変動資金が不正に使用されたり、横領されたりするリスクを増大させる」と言います。さらに、環境を汚染する企業が、腐敗により政策意思決定者に不当な影響を与えたり、政治家や公的要人(PEPs)が石油やガス会社の株式を保有することにより、気候変動対策と利益相反したりするケースも見られるとのことです。 

 今回のCPI世界平均は、3分の2以上の国が中間点の50を下回っていました。特に、不完全な民主主義国家や非民主主義国家でスコアが低い傾向にあります。この傾向は、直近数年で大きな変化はありません。 

 過去のCPIレポートについて 

腐敗認識指数(CPI) 
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20220311 

 ・2024年1月公表:2023年腐敗認識指数(CPI)について(1)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240216 

2024年1月公表:2023年腐敗認識指数(CPI)について(2) 
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240301 

AVERAGE CPI 2024 SCORE FOR DIFFERENT TYPES OF GOVERNMENT 

図2: AVERAGE CPI 2024 SCORE FOR DIFFERENT TYPES OF GOVERNMENT* 
https://images.transparencycdn.org/images/Report-CPI-2024-English.pdf 
by Transparency International is licensed under CC-BY-ND 4.0  

 

 

 図3: THE CPI USES A SCALE OF 0 TO 100
https://www.transparency.org/en/cpi/2024 
by Transparency International is licensed under CC-BY-ND 4.0  

 

 

最上位と最下位の国々 

上位国では、デンマーク(90)が7年連続の首位となっています。その後、フィンランド(88)が2位、シンガポール(84)が昨年より順位を上げて3位となっています。下位国は、南スーダン(8)、ソマリア(9)、ベネズエラ(10)が最下位の3国を占めていて、シリア(12)、赤道ギニア(13)、エリトリア(13)、リビア(13)、イエメン(13)、ニカラグア(14)、スーダン(15)、北朝鮮(15)と続いています。これらの下位国は、紛争、自由の制限、脆弱な民主主義制度に問題があるとされています。 注:()内の数字はCPI 

   Top and bottom performers 

図4: Top and bottom performers 
https://www.transparency.org/en/cpi/2024 
by Transparency International is licensed under CC-BY-ND 4.0  

 

 

2012年以降のCPIの変動 

2012年以降のCPIの変動を見ると、バーレーン(+17)、コートジボワール(+13)、モルドバ(+11)で2桁ポイントの改善が見られます。一方で、エスワティニ(-16)、オーストリア(-10)、ロシア(-8)は、ポイントを下げています。また、米国やニュージーランドのような高得点の民主主義国家でもポイントを下げているようです。 
 
  MOST SIGNIFICANT TEN-YEAR MOVERS 

図5: MOST SIGNIFICANT TEN-YEAR MOVERS 
https://www.transparency.org/en/cpi/2024 
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腐敗と気候危機 

今回のCPIレポートでは、腐敗と気候危機について取り上げています。「腐敗は、いくつかの方法で気候危機を助長している。」として問題提起しています。1つは、「気候変動資金の横領や不正使用」です。インド、コロンビア、エジプトでは、気候変動対策のための資金を必要としながら、腐敗の抑制に苦しんでいるとされています。図6では、腐敗と気候変動への適応について相関があることが示されています。 

 CORRUPTION AND READINESS TO ADAPT TO CLIMATE CHANGE

図6: CORRUPTION AND READINESS TO ADAPT TO CLIMATE CHANGE 
https://www.transparency.org/en/cpi/2024 
by Transparency International is licensed under CC-BY-ND 4.0  

 
TIのCEO Maíra Martini氏は以下のように述べています。 

「有意義な気候変動対策が、資金の不当な流用や不正利用によって損なわれることのないよう、腐敗を根絶するための緊急行動が不可欠である。政府と多国間機関は、気候変動対策資金を保護し、気候変動対策イニシアティブに対する信頼を回復するために、腐敗防止策を気候変動対策に統合しなければならない。これにより、気候変動対策の回復力と影響力が強化される。」(著者訳) 

 

 

アジア地域での腐敗状況 

アジアでは、シンガポール、ニュージーランド、オーストラリアが上位となっており、北朝鮮、ミャンマー、アフガニスタンが下位を占めています。やはり、他地域と同様に、独裁政権、紛争などの問題を抱える国のスコアが低くなっています。
 
 Regional overview

図7: Regional overview 
https://www.transparency.org/en/news/cpi-2024-asia-pacific-leaders-failing-to-stop-corruption-amid-escalating-climate-crisis 
by Transparency International is licensed under CC-BY-ND 4.0  

また今回のレポートでは、気候変動の影響を多く受け、援助資金を得ているにも関わらず、腐敗により適切に資金が使われていないとして、バングラディシュ(23)、パキスタン(27)、インド(38)、パプアニューギニア(31)、モルジブ(38)、バヌアツ(50)などの事例が挙げられています。注:()内の数字はCPI 

 

 

日本の腐敗状況 

日本のCPIは、71ポイントで180カ国中20位にランクされており、腐敗が低位の国の1つとなっています。しかし、前年と比べ2ポイント低下しています。公開されていませんが、低下の要因が気になります。 

Corruption Perceptions Index Japan

8: Corruption Perceptions Index Japan 
https://www.transparency.org/en/cpi/2024/index/jpn
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まとめ

今号では、CPI2024レポートの内容を紹介しました。日本を含め先進国では、高いCPIで腐敗は低位とされています。しかしながら、先進国は、CPIが低い国とビジネスを行っていたり、資金援助をしていたりします。先進国の資金が、腐敗に使われ、それが地球環境対策の後退に繋がっている、というのが今回のCPIレポートでの警告です。腐敗は、単にその公的要人の私腹を肥やしてしまう、というだけでなく、地球環境という大きなスケールでの影響と捉え、私たちは腐敗防止に取り組んでいく必要があります。 

 

 

 

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著者のご紹介     

   コンプライアンスデータラボの社長である山崎博史 

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

 富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)

 

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