FATF

暗号資産及び暗号資産交換業者に関するFATF基準の実施状況についての報告書(1)


FATF『不動産分野向けリスクベース・アプローチガイダンス』の内容について(1)

前号では、6月に行われたFATF全体会合での決定事項について見ていきました。今号では、その全体会合で承認された「暗号資産及び暗号資産交換業者に関するFATF基準の実施状況についての報告書」について、内容を見ていきます。 
 
報告書は、以下の4つのセクションで構成されています。 
セクション1:公的機関における暗号資産及び暗号資産交換業者(VAs及びVASPs)に関するFATF基準の実施状況 
セクション2:FATFトラベルルールの実施状況 
セクション3:市場動向と新たなリスクに関する最新情報 
セクション4:次のステップ
 
 
今号では、セクション1とセクション2について内容を見ていきます。 
 

セクション1:公的機関におけるVAs及びVASPsに関するFATF基準の実施状況 

VAs及びVASPsに関しては、「FATF勧告15.新技術の悪用防止」を遵守することが求められ、本セクションでは、各国の遵守状況がまとめられています。報告書によると、2021年6月以降のFATF相互審査(MER)及びフォローアップレポート(FUR)では、FATF勧告15の実施において限られた進捗しか見られていないとのことです。 
 
図1は、2021年6月~2022年5月に実施された相互審査及びフォローアップレポートの結果です。全体の約77%が不合格水準(Partially Compliant:一部履行、Non-Compliant:不履行)となっています。 
 

CDLニュースレター第12号_図1図1:FATFグローバルネットワーク全体における勧告15の評価結果 

(2021年6月~2022年5月) 
 
図2は、勧告15の個別基準に関する評価結果です。全体的に、Partially met(一部適合)、Not met(不適合)が多くを占めているのが分かります。特にR(勧告)15.9:トラベルルール*1を含むAML/CFTの予防的対策に関しては、約84%の国・地域が一部適合、不適合となっています。そのような状況の中、セクション2では、トラベルルールに関して各国の実施状況がまとめられています。
 
CDLニュースレター第12号_図2
 
図2:勧告15個別基準に関するFATFとFSRB*2の結果 
(2021年6月~2022年5月) 
注:Rは、Recommendation(勧告)を表す。
 
 
*1暗号資産の移転に際しての移転元・移転先情報の通知等のルール 
*2FSRB(FATF型地域体):地域ごとに存在し、FATF加盟国とFATFに加盟していない国が所属。FATF勧告をベースに相互審査を実施。技術協力のニーズ調査や情報共有等も行っている。 
 
セクション2:FATFトラベルルールの実施状況 
FATFが2022年3月に実施したトラベルルールの実施に関する調査結果によると、回答した98カ国のうち29カ国がトラベルルールの法案を可決したと回答した一方で、施行・監督措置を開始したのは11カ国のみだったとのことです。(以下の図3参照)。現在、約4分の1の国・地域が関連する法律や規制を可決しており、そのほとんどが2023年末までに施行する見込みですが、約3分の1(98カ国中36カ国、37%)はまだトラベルルールの導入に着手していない状況です。 
 
CDLニュースレター第12号_図3
 
図3:トラベルルールの実施と施行 
 
トラベルルールを導入できていないFSRBの国・地域では、(1)VA(暗号資産)およびVASP(暗号資産交換業者)のライセンス/登録制度がまだ整備されていないこと、および/または(2)トラベルルールの遵守を効果的に監督・執行するための国内の専門知識が不足していること、が障害になっているとのことです。 
 
このように、トラベルルール導入については、各国の取り組みにばらつきがあるため、トラベルルールを導入している国が自国の規制と同レベルでない他国VASPと取引をしないといけない状態(サンライズ問題)が続いていると報告書で指摘されています。 
 
報告書では、各国・地域が共通の課題について調整を続け、民間セクターが各国の状況に対応できるグローバルな技術的ツールを発展させる必要性を強調しています。また、このような各国の取組みにギャップがある中、出来る限りリスクを排除する施策についても紹介されています。 
 
<日本の状況> 
日本においては、今年4月1日から日本暗号資産取引業協会による自主規制が始まっています。そして、10月からは、本施行として、受取人の住所に関する情報及び移転取引目的等に関する情報の申告もあわせて求められることになります。詳しくは、以下の日本暗号資産取引業協会より公表されている資料をご参照いただければと思いますが、サンライズ問題を含む日本の今後の対応については注目していきたいと思います。 
 
日本暗号資産取引業協会「トラベルルール導入について」 
https://jvcea.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/202203-travel_rule.pdf 
 
今号では、「暗号資産及び暗号資産交換業者に関するFATF基準の実施状況についての報告書」の中で、「セクション1:公的機関における暗号資産及び暗号資産交換業者(VAs及びVASPs)に関するFATF基準の実施状況」、「セクション2:FATFトラベルルールの実施状況」について内容を見ていきました。次号では、続編として、「セクション3:市場動向と新たなリスクに関する最新情報」、「セクション4:次のステップ」の内容を見ていきます。 
山崎博史

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)    

 

Copyright Compliance Data Lab, Ltd. All rights reserved.  
掲載内容の無断転載を禁じます。

 

Similar posts

ブログ購読申込

コンプライアンス・データラボ代表取締役の山崎博史を含む国内外のコンプライアンス専門家やデータマネジメントのスペシャリストが、お客様のコンプライアンス管理にまつわる国内外の最新情報やトレンド、重要な問題を解説します。当ブログを通じて最新のベストプラクティスやガイドラインの情報も提供します。
 
ブログの購読をご希望の方は下記のリンクより、フォームに必要事項を入力してご登録ください。
配信は毎週金曜日を予定しています。購読料は無料です。