FATF勧告8(非営利団体 (NPO) 悪用防止)のパブリック・コンサルテーションについて
FATF勧告8(非営利団体 (NPO) 悪用防止)のパブリック・コンサルテーションについて
前号では、6月21日~23日に開催されたFATF全体会合の内容を紹介しました。今号ではそのFATF全体会合で合意されたFATF勧告8(非営利団体 (NPO) 悪用防止)のパブリック・コンサルテーションについて紹介します。
図1:FATF Public Consultation on draft amendment text
Revision of R8 of the FATF Standards and its Interpretive Note
現在パブリック・コンサルテーションが行われている、勧告8と解釈ノートの改定案は、そのプロジェクトチームによって作成されています。
今までFATF勧告の改訂は、犯罪手口の多様化や新たな技術の広まりなどにより、より厳しい基準を設定するために行われることが多いのですが、今回の勧告8の改訂は、一部の国における、NPOセクターへの過剰な予防措置に対処するためとしています。現在の勧告や解釈ノートにより、健全なNPOの活動に悪影響を与えるような施策に繋がっているケースが見られるようです。
第4次相互審査において、日本は、勧告8は、NC (Non-Compliant: 不履行)との厳しい評価を受けましたが、改訂後の勧告8の内容を踏まえ、NPOに対するマネロン・テロ資金供与などのリスク評価、低減を進めていくのと同時に、健全なNPOの活動に悪影響を及ぼさないような施策が必要になってくることが予想されます。
今回のパブリック・コンサルテーションでは、特に、勧告8の解釈ノートで掲載されている各国がNPOに適用できる措置の例の表示の仕方について意見を集めたいとのことです。この措置の例は、勧告8の解釈ノートの本文に記載されているため、一部の国や法域において、強制的なものであると認識されている可能性があるとのことです。このような意図せざる結果を是正するために、例をどのように勧告、解釈ノートに表示するか、もしくは表示せず、ベストプラクティスに掲載するか、など意見を集めたいとのことです。
改訂案は、以下からアクセス可能です。
https://www.fatf-gafi.org/en/publications/Fatfrecommendations/R8-public-consultation-jun23.html
今号では、FATF勧告8(非営利団体 (NPO) 悪用防止)のパブリック・コンサルテーションについて紹介しました。次号は、先月公表されたFATF「暗号資産及び暗号資産交換業者に関するFATF基準の実施状況についての報告書」について紹介します。
コンプライアンス・データラボ株式会社
代表取締役、CEO
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)
富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。
・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)
・公認情報システム監査人(CISA)
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)
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