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インドネシアFATF相互審査レポート


 インドネシアFATF相互審査レポートについて 

今号では、2023年3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」の「12. 追加的補助手段」の内容をご紹介する予定になっていましたが、4月27日にインドネシアの相互審査レポートが公表されましたので、予定を変更してご紹介します。日本の現状をご理解いただくために、インドネシアの審査結果と日本の審査結果とを比較しながら進めます。 

 

CDLニュースレター第28号_図1

図1:FATF Mutual Evaluation Report Indonesia

全体評価 
 
有効性評価 
有効性評価については、各国同様にインドネシアでも厳しい評価となっています。MEが7項目となっており、重点フォローアップの対象となります。日本と比較すると、「9テロ資金の捜査・訴追・制裁」において、日本はME(Moderate Level 中程度)だったのに対しインドネシアはSE(Substantial Level 十分)となっています。それ以外の項目は、同じ評価となっていますので、全体的に見てインドネシアの方が良い評価となっています。 
 
有効性評価のレベルは、HE=High Level 高い、SE=Substantial Level 十分、ME=Moderate Level 中程度、LE=Low Level 低い、の4段階評価となっています。HEとSEが合格水準です。
 
CDLニュースレター第28号_図2

図2:FATF第4次相互審査-インドネシア 有効性評価結果 

 
法令整備状況評価 
法令整備状況評価については、不合格水準のPCが5項目で、その他が合格水準のLC以上となっており、良い評価となっています。日本では、PCが10項目、NCが1項目となっていたので、日本より法令整備が進んでいる様子が分かります。 
 
法令整備状況評価は、C=Compliant 履行、LC=Largely Compliant 概ね履行、PC=Partially Compliant 一部履行、NC=Non-Compliant 不履行の4段階評価となっています。CとLCが合格水準です。 
 
 
CDLニュースレター第28号_図3
図3:FATF第4次相互審査-インドネシア 法令整備状況評価結果
 
 
主な評価結果 
インドネシアの主な評価結果を抜粋、要約して、以下でご紹介します。 

リスクの状況: 
・マネーロンダリングリスクは、主に汚職、麻薬、租税犯罪、林業犯罪などの国内犯罪に起因している。 
・国内にはテロ組織やその支援者が存在するため、高いテロ資金供与リスクに直面している。 
 
 
評価されている点: 
・マネーロンダリングとテロ資金供与に取り組むための強力な法的枠組みを有しており、金融情報や国内外の協力をうまく活用している。 

・FIU(Financial Intelligence Unit 資金情報機関)は、マネーロンダリング、テロ資金供与、その他の犯罪に関する捜査に利用するため、法執行機関に高品質でタイムリーかつ適切な金融情報を提供している。 
 
改善が求められる点: 
・資産回復の改善、リスクに応じた監督、妥当で抑止力のある制裁にもっと注力する必要がある。 

・銀行、大規模金融機関、暗号資産サービスプロバイダーは、自分たちが直面するリスクについてよく理解しているが、他の部門(DNFPBs)では理解にばらつきがある。 

・特に両替商、資金移動業者、非金融部門に対するリスクベースの監督を改善し、すべての部門において効果的かつ説得力のある制裁を課す必要がある。 

・すべての企業の実質的支配者に関する正確な情報を法執行機関が利用できるようにする必要がある。 

・さまざまな種類のマネーロンダリング活動の調査と訴追を改善し、犯罪者から犯罪収益、特に海外にある資産や林業や環境犯罪による資産を恒久的に凍結することを確実にする必要がある。 

・テロ資金供与のためにNPOが悪用されるリスクについての理解を深め、合法的な慈善活動を阻害したり混乱させたりすることなく、相応の措置を講じるべきである。 

・拡散金融に対する標的型金融制裁の法的枠組みの欠点に対処するための措置を講じているが、いくつかの重大なギャップが残っている。 
 
インドネシアの治安の状況から、マネロン、テロ資金供与などのリスクは高いとみられますが、その中で当局はFATFの勧告に沿って対応を進めている様子が見られます。しかしながら、指摘内容をみると、まだテロ資金供与、拡散金融、環境犯罪などの対策の強化が必要な状況となっています。特に大規模金融機関以外の部門での改善が求められています。日本においても同様の指摘があり、今後インドネシアにおいてどのように対策が進められていくのか、フォローアップレポートの内容に注目していきます。 
 
今号では、2023年4月27日に公表されたインドネシアの相互審査レポートの内容について紹介しました。次号は、FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容に戻り「12. 追加的補助手段」を紹介します。 
 
 
 
山崎博史

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)    

 

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