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シンガポール金融管理局=MASレポート「法人悪用によるML/TFリスクの検知と低減のための効果的なデータ分析の利用」について(2)


シンガポール金融管理局=MASレポート
 
「法人悪用によるML/TFリスクの検知と低減のための効果的なデータ分析の利用」について(2)

 前号では、本年(2023年)6月に公表されたMAS (Monetary Authority of Singapore:シンガポール金融管理局)の「法人悪用によるML/TFリスクの検知と低減のための効果的なデータ分析の利用 (Effective Use of Data Analytics to Detect and Mitigate ML/TF Risks from the Misuse of Legal Persons)」 に関するレポート(前半)について紹介しました。今号ではそのレポート後半に書かれている4つのデータ分析の事例から、潜在的なシェルカンパニーのネットワークを検出した事例と潜在的な制裁回避行動を検知した事例の2つを取り上げて紹介します。 

 

CDLニュースレター第36号_図1-1
図1: MAS Effective Use of Data Analytics to Detect and Mitigate ML/TF Risks from the Misuse of Legal Persons
 

潜在的なシェルカンパニーのネットワークを検出 

以下は、データ分析により潜在的なシェルカンパニーのネットワークを特定し、当局の捜査に繋がった事例です。 

 <シェルカンパニーのネットワークを特定したプロセス> 

シェルカンパニーのネットワークを特定したプロセスは以下の通りです。(図2をご参照ください) 

  1. 取引モニタリングのアラートが発生し、様々な法人顧客に対して検証を開始した。
  2. 銀行スタッフは、これらの顧客に共通の関係者がいることを検知した。
  3. 銀行はネットワークリンク分析ツールを使用して顧客を検証し、シェルカンパニーのネットワーク全体を把握しました。

 
CDLニュースレター第37号_図2

図2:Case Study 1 -Detected network of potential shell companies 

MAS Effective Use of Data Analytics to Detect and Mitigate ML/TF Risks from the Misuse of Legal Personsより引用 

 

<データ分析を利用した成果> 

データ分析を利用した成果は以下の通りです。 

  • 銀行Aは、取引モニタリングの一環として、潜在的なシェルカンパニーのレッドフラッグ(潜在的に疑わしい状況、取引、活動であるものとして、注意を喚起する警告シグナル)を示す顧客をいくつか特定した。例えば、顧客の払込資本金と取引量に不一致があった。 
  • ネットワークリンク分析ツールを使用することで、銀行は、共通のノミニー取締役(名義上の取締役)または実質的支配者を持つシェルカンパニーの潜在的なネットワークを確認することができた。 
  • 銀行は、このネットワークに関連する顧客を特定し、当局にSTR(疑わしい取引の届出)を提出。当局による捜査に繋がった。 

ネットワークリンク分析ツールの活用により、銀行は、疑わしい顧客を最初のスクリーニングで特定した後、審査が必要となる企業ネットワーク全体を迅速に把握することができ、内部での迅速なエスカレーションとリスク軽減、および当局への通報が容易になりました。 

 潜在的な制裁回避行動の検知 

次は、シェルカンパニーの特徴を示す事業体や通常とは異なる取引パターンを検出し、制裁リスクのある国との潜在的な関連性を明らかにすることで、さらなる内部調査に繋がった事例です。 

<潜在的な制裁回避行動を検知したプロセス> 

潜在的な制裁回避行動を検知したプロセスは、以下の通りです。(図3をご参照ください) 

  1. 銀行Bは、機械学習モデルの予測により、シェルカンパニーの特徴を示す事業体にフラグを立てた。 
  2. ネットワークリンク分析とデータ分析を使用して、検証のための追加のフラグを立てた。 
  3. 他国への支払を支援する第三者や制裁リスクのある国とのつながりを含む、複数のレッドフラグを示すすべての事業体を検知した。
 
CDLニュースレター第37号_図3

図3:Case Study 2 - Detected potential sanction evasion activities 

MAS Effective Use of Data Analytics to Detect and Mitigate ML/TF Risks from the Misuse of Legal Personsより引用 

<データ分析を利用した成果> 

データ分析を利用した成果は以下の通りです。 

  • 銀行Bは、機械学習モデルの予測により、レッドフラッグ、取引行動、顧客プロファイルなどの複数の特徴に基づき、フロント/シェルカンパニーと思われる事業体にフラグを立てた。 
  • さらにデータ分析とネットワークリンク分析を活用し、銀行はこれらの事業体の取引先を洗い出した。そして、以下のすべての事業体に1つ以上のレッドフラグを立てた:  

- 他国への第三者支払いを促進するシェルカンパニー  

- 事業内容に沿わない取引を行う事業体 

- 制裁リスクのある国とのつながりの可能性がある事業体 

  • 銀行はSTRを提出し、このネットワークに関与する事業体の大半との取引を停止した。 

フロント/シェルカンパニーの予測モデルの構築により、銀行は潜在的なシェルカンパニーにフラグを立てることができ、レッドフラグとともに他の関連する事業体の検出につながりました。これらの検出された事業体は、データ分析とネットワークリンク分析から得られた洞察の積み重ねによって初めて特定されたものであり、これによって銀行は取引の流れをより包括的に把握することが出来るようになりました。 

 今号では、6月に公表されたMAS「法人悪用によるML/TFリスクの検知と低減のための効果的なデータ分析の利用」に関するレポートの後半から2つの事例を紹介しました。次号では、当レポートで紹介されている残りの2つの事例について取り上げます。 

 

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