2016年10月の犯収法改正で法人顧客との特定取引において実質的支配者の確認が義務付けられてから10年が経過しました。FATF第五次相互審査を控える中で、当局の働きかけや金融機関の尽力により「実質的支配者」という言葉は一般化してきたように感じます。検索ボリュームの長期トレンドを見ながら、これまでを振り返ってみます。
目次
検索ボリュームの10か年推移/月次
下図は、GoogleTrendsより日本国内における「実質的支配者」および「UBO(=Ultimate Beneficial Owner)」の検索ボリュームの推移を相対指標(0~100)で示しています。

・2018年頃から「実質的支配者」の検索ボリュームは増加傾向であり、2025年がピーク
・検索ボリュームは「UBO」よりも「実質的支配者」の方が多い
⇒同じ意味を持つものの、一般的には「実質的支配者」の方が浸透しているようです。場合によっては犯収法上の定義ではなく、「法人の背後に潜む悪意のある人物」のような意味合いで使われることもあるようです。
今後は2028年のFATF第五次審査に向けて、また金融機関だけでなくDNFBPsなど裾野の広がりによってさらに検索ボリュームが増加することが考えられます。
・2016年9月に一時的に「実質的支配者」の検索ボリュームが急上昇
⇒2016年9月は、冒頭で述べた犯収法改正の直前です。金融機関等の業務・システムが大きく変わる転換期であり、本改正については新聞やニュースでも取り上げられていたと思われます。当時の実務担当者がこぞって検索したのでしょうか。
・検索ボリュームは月単位で見ると増減がある
⇒恒常的に検索されるというよりは、AML関連のトピックに応じて市場が反応している可能性があります。より細かい単位で確認してみます。
検索ボリュームの5か年推移/週次

・検索ボリュームの主なピークと、実質的支配者に関連するトピックの公表/施行タイミングが合致
⇒すべてのピークの理由を完全に説明することは難しいですが、図内で示した3つのピークとトピックについては概ね関連性があると考えられます。
なお、2025年6月10日の日経新聞には、弊社の「コンプライアンス・ステーション®UBO」において、実質的支配者の変更を検知できる機能について取り上げられました。
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・「UBO」の検索ボリュームは20前後を維持
・ただし、近年は波の発生頻度が増加傾向にある
⇒概ね「実質的支配者」のトレンドに応じているものの、「UBO」の検索ボリュームは伸びにくい傾向にあります。実務担当者や専門家コミュニティなど、限られた層の中で用いられている可能性が考えられます。
・GWや年末年始などの長期休暇期間は検索ボリュームが激減
⇒あらゆる業界用語に共通する傾向といえます。
(余談)生成AI台頭と検索行動の減少
株式会社シードが実施した調査によれば、生成AI利用者の約4割が検索エンジンを用いた検索の回数が減少したと回答しています。

出典元:デジマ部(運営会社:株式会社シード)
以上、検索ボリュームの推移からは、「実質的支配者」という概念が制度改正や当局動向と強く連動しながら、段階的に社会実装されてきた過程が読み取れます。一方で、生成AIの台頭により、関心そのものが検索行動として可視化されにくくなる傾向にあります。今後は、検索ボリュームを「関心の絶対量」として捉えるのではなく、制度変更・実務負荷・現場の困りごとが表出する“シグナルの一つ”として位置づける視点がより重要になるでしょう。
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国の行動計画において2024年3月を期限とした「継続的顧客管理の完全実施」や「既存顧客の実質的支配者情報の確認」への対応のため、「コンプライアンス・ステーションUBO」へのお問合せが増えています。
「コンプライアンス・ステーションUBO」は、国内最大級の企業情報データベースを基に、犯収法に沿ってオンラインで瞬時に実質的支配者情報等を提供するサービスです。DM調査で思うようにUBO情報が得られない、DM調査等のコストを削減したいなど、課題がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
「コンプライアンス・ステーションUBO」については以下のリンクから詳しくご確認いただけます。 (2023年6月15日発表のプレスリリース)
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