Newsletter

【2023年3/10公表】FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(2)


 FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(2)

 2023年3月10日に正式なガイドラインが公表されましたので、前号からその内容を紹介しています。ドラフト版で紹介済みの範囲はまた改めて正式版との差分を見ますが、前号からは、ドラフト版で取り上げていない章を中心に紹介しています。今号は、「10. 登録簿アプローチ」の内容を紹介します。 

CDLニュースレター第25号_図1

図1:FATF GUIDANCE ON BENEFICIAL OWNERSHIP FOR LEGAL PERSONS 

 
ガイドライン全体構成 

以下は、ガイドラインの目次です。この中から今号では、「10. 登録簿アプローチ」について見ていきます。 
1. はじめに  
2. 法人に関連するリスクの把握と評価 
3. 基本情報  
4. 実質的支配者情報  
5. 実質的支配者に対する多面的アプローチ  
6. 適切な実質的支配者情報 
7. 正確な情報 - 実質的支配者情報の検証手段 
8. 最新の基本情報および実質的支配者情報 
9. 企業アプローチに基づく企業の義務 ←前号、第25号で紹介 
10. 登録簿アプローチ  ←今号、第26号で紹介 
11. 法人の実質的所有者情報を取得するためのメカニズムと情報源:代替的メカニズムの特徴→次号、第27号で紹介予定 
12. 追加的補助手段  
13. 情報へのアクセス  
14. 無記名株式および無記名新株予約権の悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
15. ノミニーアレンジメントの悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
16. 制裁措置  
17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係 
18. 関連する規制制度の適用性  
19. 国際協力 
 
10. 登録簿アプローチ 
FATF勧告24では、管轄当局が法人の実質的支配者に関して適切、正確かつ最新の情報に確実にアクセスできるようにする方法の一つは、公的機関又は団体がこの情報(例えば、税務当局、FIU、企業登録簿、実質的支配者登録簿)を保有することである、としています。 
 
実質的支配者情報を保有する登録簿は、管轄当局が迅速かつ効率的な方法で(しばしばリアルタイムで)直接の情報源から係る情報にアクセスできるようにすることで、効果的なメカニズムとなり得ます。 
 
効果的な登録簿を構築するため、ガイドラインでは、以下のように実質的支配者登録簿の構築、運用例を挙げています。 
 
公的機関又は団体が実質的支配者(BO)情報を保有する仕組みは、以下の機能の一部又は全部を含むことができる:  
 
i. 会社は、登記時に、基本情報および実質的支配者情報を企業登録簿に提供することを要求される。 
 
ii. 会社は、基本情報および実質的支配者情報を、定期的に、もしくは変更があった際に合理的な期間内(例:1か月以内)に会社登記簿に情報提供することが要求される。 
 
iii. 会社は、実質的支配者と所有構造に関する申告(例えば、申告書)を行うことが要求される。これには、本人確認のための書類のコピーの提出も含む。 
 
iv. 実質的支配者情報を保有する公的機関又は団体は、リスクベースアプローチにより、実質的支配者の本人確認及び実質的支配者とみなされるための基準を本当に満たしているかどうかを確認することが求められる。 
 
v. 実質的支配者情報を提供しない会社は、設立の制限など、相応かつ説得力のある制裁の対象となり、かかる制裁が適用される。 
 
vi. 不正確な情報の提供は、その会社に対して、相応かつ説得力のある行政処分および/または刑事制裁の対象となる。また、会社の代表者は個人的な責任を問われる可能性がある。 
 
vii. 実質的支配者情報を保有する公的機関または団体は、義務違反があった場合、そのような制裁を定期的に適用し、または違反行為を適切な機関に報告する。 
 
viii. 実質的支配者情報を保有する公的機関または団体は、リスクベースの検証、テクノロジーの利用などを通じて、他の情報源(株主、国民ID登録簿など)と情報を照合することにより異常または矛盾を特定し、証跡の不正または不適切な開示のリスクを低減するなど、自ら不正を検知、対策する役割を担っている。 
 
ix. 公的機関または団体が保有する実質的支配者情報は、デジタルで記録され、検索可能である。検索機能は、複数のフィールドによる検索をサポートしている。 
 
x. 管轄当局は、公的機関または団体が保有するすべての実質的支配者情報に、完全な検索機能を含め、オンラインで迅速かつ効率的にアクセスすることができる。 
 
xi. 実質的支配者情報を保有する公的機関又は団体は、データベース内の不正使用又は異常な活動の指標(レッドフラッグ)を識別する能力を有する。 
 
xii. 会社の基本情報が公開されている。一部または全ての実質的支配者情報も公開されるか、最低限金融機関やDNFBPsが利用できるようする。 
 
xiii. 金融機関及びDNFBPs、並びに必要に応じて所轄官庁は、公的機関又は団体が保有する実質的支配者と、彼らが利用できる実質的支配者との間に見出した不一致を報告する。実質的支配者情報を保有する公的機関または団体、および/またはその他の関係当局は、合理的な期間内に情報を修正するための適切な措置をとる。 
 
xiv. 実質的支配者情報を保有する公的機関または団体は、実質的支配者情報に加え、企業の株主情報を取得し、保有することができる。 
 
xv. 実質的支配者情報を保有する公的機関または団体は、取締役会、上級管理職、および会社を代表して行動する権限を有するその他の自然人に関する情報を収集する。 
 
xvi. このメカニズムは、企業の実質的支配者情報を所轄官庁が適時に決定できるようにするために、他のアプローチによって補完される。 
 
xvii. データ保護とプライバシーの保護措置が設けられている。 
 
日本においては、昨年1月に実質的支配者リスト制度がスタートしました。まだFATFが勧めるような仕組みにはなっていませんが、第4次相互審査のフォローアップと第5次相互審査に向けて、どのように制度が強化されていくか注目しています。 
 
今号では、3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」の中の「10. 登録簿アプローチ」について紹介しました。次号は、「11. 法人の実質的所有者情報を取得するためのメカニズムと情報源:代替的メカニズムの特徴」の内容をみていきます。 

 
 
山崎博史

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)    

 

Copyright Compliance Data Lab, Ltd. All rights reserved.  
掲載内容の無断転載を禁じます。

 

Similar posts

ブログ購読申込

コンプライアンス・データラボ代表取締役の山崎博史を含む国内外のコンプライアンス専門家やデータマネジメントのスペシャリストが、お客様のコンプライアンス管理にまつわる国内外の最新情報やトレンド、重要な問題を解説します。当ブログを通じて最新のベストプラクティスやガイドラインの情報も提供します。
 
ブログの購読をご希望の方は下記のリンクより、フォームに必要事項を入力してご登録ください。
配信は毎週金曜日を予定しています。購読料は無料です。