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【2023年3/10公表】FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(4)


 FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(4)

前号では、一旦、FATF「実質的支配者に関するガイドライン」から離れ、4月27日に公表されたインドネシアの相互審査レポートの内容をご紹介しました。今号は、ガイドラインに戻り、「12. 追加的補助手段」の内容を紹介します。 

CDLニュースレター第27号_図1

図1:FATF GUIDANCE ON BENEFICIAL OWNERSHIP FOR LEGAL PERSONS

ガイドライン全体構成 

以下は、ガイドラインの目次です。この中から今号では、「12.追加的補助手段」について見ていきます。 
1. はじめに  
2. 法人に関連するリスクの把握と評価 
3. 基本情報  
4. 実質的支配者情報  
5. 実質的支配者に対する多面的アプローチ  
6. 適切な実質的支配者情報 
7. 正確な情報 - 実質的支配者情報の検証手段 
8. 最新の基本情報および実質的支配者情報 
9. 企業アプローチに基づく企業の義務 
10. 登録簿アプローチ 
11. 法人の実質的所有者情報を取得するためのメカニズムと情報源:代替的メカニズムの特徴←前々号、第27号で紹介 
12. 追加的補助手段 ←今号、第29号で紹介 
13. 情報へのアクセス ←次号、第30号で紹介予定 
14. 無記名株式および無記名新株予約権の悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
15. ノミニーアレンジメントの悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
16. 制裁措置  
17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係 
18. 関連する規制制度の適用性  
19. 国際協力 
 


12. 追加的補助手段 
 
FATFでは、管轄当局が適時に法人の実質的支配者を特定できるように多面的アプローチを勧めています。多面的アプローチのための追加的補助手段の例として、以下が挙げられています。 
a) 他の規制当局/監督当局が保有する情報 
b) 証券取引所が保有する情報 
c) 勧告10(顧客管理) に従って金融機関が取得する情報 
d) 勧告22(DNFBPにおける顧客管理) に従って DNFBPが取得する情報 

 
ここでは、読者の皆様の関心が高いと思われる、「金融機関及びDNFDPが顧客管理を通じて取得する情報」に関する記載について紹介します。 
 
上記c), d)を追加的補助手段として利用する場合は、国は、以下について、金融機関及びDNFBPに要求すべきとしています。 
 
・勧告に基づき、実質的支配者の身元を特定し、検証するための合理的な措置を取ること 
・顧客の所有権及び支配構造、並びに顧客のビジネス及びリスクプロファイルを理解すること 
・所有権・支配構造及びリスクプロファイルの理解に関する義務は、継続的であるべき 

 
国に対しては、「金融機関及びDNFBPが顧客管理(CDD)の要求事項を遵守していることを確認するため、効果的な監視・監督が必要である」と要求しています。 
 
あと、注目すべきところは、「実質的支配者情報は、他のアプローチにより入手可能であっても、金融機関及び DNFBPがそれぞれ勧告10及び22に基づく義務を免除されることはない」「金融機関及びDNFBP がCDD を実施する際に、他のアプローチの情報のみに依存すべきではない」との言及があります。この「他のアプローチ」には、登録簿アプローチも含みます。日本では、実質的支配者の登録簿がないため、金融機関等において実質的支配者情報を収集できなくても仕方ない、といった声を聞くことがあります。しかしながら、FATFでは、登録簿があったとしても、金融機関及びDNFBPに、それに依存しない実質的支配者の特定を含むCDDを要求しています。日本においては、実質的支配者の登録簿構築が課題となっていますが、これは国の課題であって、金融機関及びDNFBPにおいては、登録簿の有無に関わらず、独自の情報収集の必要性が示されています。 
 
今号では、2023年3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」の中の「12. 追加的補助手段」について紹介しました。次号は、「13. 情報へのアクセス」の内容をみていきます。 

 
 
山崎博史

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)    

 

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