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【2023年3/10公表】FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(6)


 FATF実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(6)

前号では、3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」から「13. 情報へのアクセス」についてご紹介しました。今号では「17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係」の内容を紹介します。 

CDLニュースレター第27号_図1

図1:FATF GUIDANCE ON BENEFICIAL OWNERSHIP FOR LEGAL PERSONS

ガイドライン全体構成 

以下は、ガイドラインの目次です。この中から今号では、「17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係」について見ていきます。 
1. はじめに  
2. 法人に関連するリスクの把握と評価 
3. 基本情報  
4. 実質的支配者情報  
5. 実質的支配者に対する多面的アプローチ  
6. 適切な実質的支配者情報 
7. 正確な情報 - 実質的支配者情報の検証手段 
8. 最新の基本情報および実質的支配者情報 
9. 企業アプローチに基づく企業の義務 
10. 登録簿アプローチ 
11. 法人の実質的所有者情報を取得するためのメカニズムと情報源:代替的メカニズムの特徴 
12. 追加的補助手段  
13. 情報へのアクセス ←前号、第30号で紹介 
14. 無記名株式および無記名新株予約権の悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
15. ノミニーアレンジメントの悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
16. 制裁措置  
17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係←今号、第31号で紹介 
18. 関連する規制制度の適用性  
19. 国際協力 
 

17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係 
 
CDD(カスタマーデューデリジェンス)の一環としての電信送金と実質的支配者 
ガイドラインでは、電信送金において、金融機関が随時取引を行う際に、勧告10(顧客管理)に規定されているCDDの措置を講じることを要求されるべきである、としています。 
 
このCDDの措置は、「送金人や受取人の実質的支配者の身元を特定し、検証するための合理的な措置を講じる」という要件を満たす必要があります。  
 
さらに、勧告16(電信送金(送金人・受取人情報の通知義務))は、金融機関に対し、一定の送金人情報を収集し、その情報が電信送金に確実に紐付けられる措置を講じることを求めています。 
 

暗号資産 
各国は、金融機関やDNFBPs と同様に、VASP(暗号資産サービスプロバイダー)の悪用を防止するための措置を講じ、VASPが容易に実質的支配者情報へアクセスできるような措置を検討すべきである、としています。 
 
また、ガイドラインでは、VA(暗号資産)およびVASP活動に関して、各国は、匿名性を高める技術またはメカニズムが悪用され、VAの実質的支配者を隠すために使われないように管理し、リスク軽減措置を取るべきとしています。VASPがリスクを管理し、軽減できない場合には、VASPは営業することを許可されるべきではないともされています。 
 
勧告10に関連して、以下のような記述があります。 
・勧告10に基づく義務を果たすためのCDDの実施において、VASPは、国内法で要求される顧客特定情報を収集し、検証すべきである。 

・対象となるVA活動(VA支払、VA移転、VA発行等)については、VASPによる顧客と実質的支配者情報の検証は、関係を構築する前またはその過程で完了すべきである。 

・取引相手のVASPのDD(デュー・デリジェンス)は、クロスボーダーのコルレス関係になる場合や、必要なトラベルルール情報を送信する前に完了すべきである。また、定期的あるいは、関係から新たなリスクが顕在化した際には、情報が更新されるべきである。 

・取引相手のDDを実施する際、VASPは、勧告10と13(コルレス銀行業務) に定める情報を取引先VASPから直接入手することができる。この情報は、法人の身元や実質的支配者の検証のために、信頼できる独立した情報源で検証されるべきである。 
 
今まで、暗号資産においては、あまり実質的支配者の議論がなったように思いますが、今後、VA及びVASPにおける実質的支配者の特定、検証について、対応が必要になってくることが予想されます。 
 
今号では、2023年3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」の中の「17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係」について紹介しました。今号で、FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容は最後となります。次号は、2023年6月21日~23日に開催されているFATFの全体会合の内容について紹介します。 
 
 
山崎博史

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)    

 

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