海外事例

香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」について(4)


今号では、香港金融管理局「AML Regtech: Network Analytics (May2023)」の中から、3つ目のケーススタディ(事例研究)を紹介します。 

CDLブログ第2号_図1図1: 香港金融管理局「AML Regtech: Network Analytics」 より引用 

 

<ケーススタディの紹介> 

事例3:デジタルフットプリントや外部データを利用して見えづらい犯罪を明らかにする 

銀行Cでは、従来のデータに加え、デジタルフットプリント(足跡)や外部データを利用することにより、見えづらい犯罪を明らかにしています。 

CDLブログ第14号_図2

図2:香港金融管理局「AML Regtech: Network Analytics」P21より抜粋 

上図は、左から「従来の情報」、「非伝統的なデータ」、「外部データ」とデータを追加し、リスクを顕在化していった例です。 

 従来の情報のみであると、Account1~4は、特にハイリスクと考えられる要素はありません。Account2~4は、関連のない口座に見え、それぞれAccount5に入金されていますが、特に不自然な取引ではありません。  

次のプロセスで、「非伝統的なデータ」として、送金に使われたデバイスの情報を追加しています。すると、Acoount2~4の送金が1つのモバイル端末から操作されていることが分かりました。Account2~4は、それぞれ別の人物により口座開設されていますので、同じ端末で操作がされていることは、通常ではありえないケースです。何か犯罪に使われている可能性があると考えられます。 

また、「外部データ」を追加すると、Account1を保有しているCompany Aのオーナー(実質的支配者)が明らかになりました。そのオーナーをスクリーニングにかけると、PEP(重要な公的地位を有する者=地位または影響力を利用して贈収賄または汚職に関与する可能性が高い人)であったと判明しています。 

このように、従来の情報に加え、「非伝統的なデータ」(アクセスされた端末など)、「外部データ」(実質的支配者、取締役など)の情報を利用することにより、今まで見逃がしていた犯罪を捉えることが出来る可能性があります。 

本レポートでは、以下のように書かれています。 

「銀行Cは、ネットワーク分析導入の経緯を振り返り、データが重要な成功要因であると述べた。彼らは、ネットワーク分析の初期導入時に、データの優先順位付け、標準化、クレンジング、フォーマット化に時間とリソースを使い、単一の統合された顧客ビューを開発することの重要性を強調している。データの不整合(複数のソース・システムから特定のデータ項目を取得する場合など)などの問題を解決することも、このプロセスの一部であった。 

(中略)銀行Cは一元化されたコンプライアンス・データレイク(あらゆるデータをそのままの形で保存しておくデータの格納庫)を構築し、ネットワーク分析プログラムとその他のコンプライアンス・イニシアチブの両方をサポートすることができた。データを前もって準備することで、ネットワーク分析の展開に必要な時間が大幅に短縮された。」(P21より抜粋、筆者による翻訳) 

コンプライアンス目的に関わらず、データ分析をするためには、データの整備が必要になります。具体的には、複数のデータベースが存在する場合は、そのデータの統合し、データベース内には、顧客が重複なく名寄せされ、必要な属性情報が紐づいていなくてはなりません。 

データ整備についても、本レポートで言及されていますので、次回の私のブログでご紹介します。 

また、データ統合、名寄せなどについては、次の弊社ウオリック・マセウスのブログもぜひご参照ください。 

2023年10月20日 ウオリック・マセウス著
データマッチング:マッチ率を追い求めていませんか?実はその方法・・・間違っているかも知れません!

2023年11月17日 ウオリック・マセウス著
MDMとIDR(データマッチング):完璧を追い求めるのはやめよう!

2023年12月15日 ウオリック・マセウス著
IDR (データマッチング):郵便番号にうっとり!


著者のご紹介

hiro

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

 富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)  

 

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