最新 FATF 全体会合報告 (2024年10月23日~25日開催)
今号は、2024年10月23日~25日に開催されたFATF全体会合の内容を見ていきます。
Outcomes FATF Plenary, 23-25 October 2024
https://www.fatf-gafi.org/en/publications/Fatfgeneral/outcomes-fatf-plenary-october-2024.html
目次
◆ 総論
2. 相互審査報告書
3. ロシア問題
4. NRA(国のリスク評価)
8. FATFにおける女性とグローバル・ネットワーク(WFGN)
◆ 総論
今回のFATF全体会合では、第4次相互審査における最後の2か国(アルゼンチン、オマーン)の評価報告書が承認されました。今後は、第5次相互審査に入っていきます。第5次相互審査では、リスクベースでの評価が重視され、より有効性のある対応が求められます。第5次相互審査は、ベルギー、マレーシアから行われる予定ですので、その評価レポートには注目です。また、今回は、ケイマン諸島、セネガルが初めてFATF全体会合と作業部会に招待されました。ケイマン諸島はタックスヘイブンでよく知られています。私は、以前にグローバル企業情報の会社に勤めていたのですが、ケイマン諸島の情報はなかなか収集が難しく課題となっていました。このようにFATFへの参加を通じて、企業情報等の透明性が高まることが期待されます。
以下では、その他FATF全体会合での内容をご紹介します。
1. 高リスクおよびその他のモニタリング対象地域
今回のFATF全体会合で、アルジェリア、アンゴラ、コートジボワール、レバノンが、強化モニタリング対象となる国・地域のリスト(グレイリスト)に追加されました。一方で、セネガルはAML対策などで大きな進展を遂げたとのことで、強化モニタリングの対象から外れることになりました。
・行動要請対象の高リスク国・地域
対抗措置の適用が要請される国・地域 |
北朝鮮、イラン |
対象となる国・地域から生じるリスクに 見合った厳格な顧客管理措置の適用が 要請 |
ミャンマー |
・強化モニタリング(グレイリスト)対象国・地域
追加された国 |
アルジェリア、アンゴラ、コートジボワール、 |
削除された国 |
セネガル |
継続中の国 |
ブルガリア、ブルキナファソ、カメルーン、 |
2. 相互審査報告書
アルゼンチン
アルゼンチンは、2021年の前回相互評価以降、マネロン、テロ資金供与等対策の枠組みを改善していると評価されました。一方で、拡散金融や標的型金融制裁に関しては実効性の向上、また、汚職や不正金融サービスを通じたマネーロンダリングについて理解を深め、これらの犯罪の訴追を強化する必要があるとされています。
オマーン
オマーンは近年、強固な法令整備状況とともにマネロン、テロ資金供与等対策の枠組みを大幅に改善したと評価されました。一方で、高い実効性を達成するための努力を長期的に強化することや、法人の悪用防止についてリスクに応じた監督強化が求められています。
3. ロシア問題
ロシアのFATFのメンバーシップ停止は続いています。FATFは、国際金融システムを保護するため、すべての国・地域がロシアの制裁回避による、現在および新たなリスクに警戒すべきであると改めて表明しています。
4.NRA(国のリスク評価)
FATFは、改めてリスクベースアプローチがFATF勧告の中核にあり、有効的な対応であると主張しています。それぞれの国が直面するリスクを特定、評価、理解し、最大の効果をもたらすところにリソースを向けることを各国に促しています。
5.金融包摂とリスクベース・アプローチ
本全体会合で、金融包摂(人々が貧困、差別などにより金融サービスから取り残されることなく、必要なサービスにアクセス、利用できる状態)を支援するため、主に勧告1の改定案に対するパブリック・コンサルテーション(日本のパブコメに近い)を実施することを合意しました。このパブリック・コンサルテーションを経て、2025年に関連する勧告の改定とガイダンスが決定されるとのことです。
6.グローバルネットワークの協力
メキシコのFATF新議長の下、FSRB(FATF型地域体)の発言力とFATF作業への参加を高め、グローバル・ネットワークの結束を強化することを目指しています。今回の全体会合で、FATF加盟国は、グローバル・ネットワーク全体で質の高い一貫した評価を実施するため、地域体への支援を強化することに合意しました。また、今回、セネガルとケイマン諸島という2つのゲスト国・地域を招いたように、グローバル・ネットワークの協力を進める新たな取組を開始しました。
7.進行中の作業と新規プロジェクト
FATFは、国を跨いだ決済システムの進化や業界標準の変化などに応じたFATF基準の改訂、テロ資金供与リスクに関する包括的な見直しを行っています。また、オンライン上の児童の性的搾取の検知と防止を支援するプロジェクトにも取り組んでいます。新規プロジェクトとしては、データ保護・プライバシーとアンチマネーローンダリング・テロ資金供与対策に関する規制の整合性に関する検討が始まります。FATFの要求事項がNPOの活動を制限しないよう、プロセスの見直しも行うとのことです。
8.FATFにおける女性とグローバル・ネットワーク(WFGN)
FATFは、ジェンダー多様性向上のための活動を強化していくとのことです。ジェンダーの包摂性と多様性を強化するため、第2回メンタリング・プログラムを開始するとしています。
◆「コンプライアンス・ステーション UBO(実質的支配者)」 無償トライアルのお知らせ
国の行動計画において2024年3月を期限とした「継続的顧客管理の完全実施」や「既存顧客の実質的支配者情報の確認」への対応のため、「コンプライアンス・ステーションUBO(実質的支配者)」へのお問合せが増えています。
「コンプライアンス・ステーションUBO(実質的支配者)」は、国内最大級の企業情報データベースを基に、犯収法に沿ってオンラインで瞬時にUBO情報を提供するサービスです。DM調査で思うようにUBO情報が得られない、DM調査等のコストを削減したいなど、課題がありましたら、是非コンプライアンス・ステーションUBOの利用をご検討ください。
「コンプライアンス・ステーションUBO(実質的支配者)」については以下のリンクから詳しくご確認いただけます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000094258.html (2023年6月15日発表のプレスリリース)
なお、ご興味のあるお客様へ実際のデータを使った無償トライアルをご提供しています。
ご希望のお客様はお気軽に下記リンクより、お問い合わせ、お申し込みください。
著者のご紹介
コンプライアンス・データラボ株式会社
代表取締役、CEO
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)
富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。
・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)
・公認情報システム監査人(CISA)
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)
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