金融犯罪対策

オンラインカジノとマネーロンダリング問題について

オンラインカジノの法的リスクや日本国内での規制状況を徹底解説。AML/CFT対策が求められる理由や、金融機関、仮想通貨取引所、決済代行業者が取るべき具体的な対応策を紹介します。国際的な情報共有の重要性や技術的課題にも言及し、オンラインギャンブルに関する課題と解決策をわかりやすく解説。


 

目次

  1. オンラインカジノ利用の現状
  2. オンラインカジノとマネーロンダリングの関係
  3. オンラインカジノに対する規制の現状と問題
  4. 最後に

 

 

 

1. オンラインカジノ利用の現状

日本でのオンラインカジノの位置付け

日本では、オンラインカジノの利用は原則禁止され、賭博罪に該当します。警視庁も、海外で合法的に運営されるオンラインカジノであっても、日本国内から利用することは違法としています(警視庁ウェブサイト)。この立場は、日本の刑法第185条(単純賭博罪)および第186条(常習賭博罪)に基づいており、国内からの利用は「賭博行為」と見なされる可能性が高いです。

一方で、一部では「海外サーバーで合法的に運営されている場合、日本国内での利用は違法ではない」という声もあります。しかし、実際には、これらの説は法執行機関の見解と相反するものであり、利用者が逮捕された事例も報告されています。

オンラインカジノで賭博疑い 24都府県警が客の57人摘発
引用:日本経済新聞

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引用:日本経済新聞

オンラインカジノが広がる背景

オンラインカジノが以前に比べて普及した理由として下記のような理由が考えられます。

  • 技術の進化:モバイルアプリやウェブプラットフォームの発達により、カジノゲームが容易にアクセス可能になりました。

  • 支払い手段の多様化仮想通貨や匿名性の高い決済方法の利用が進んでいます。特に、ビットコインやモネロといった仮想通貨は、トランザクション履歴が一部匿名化されるため、資金の出所を追跡することが困難です。また、プリペイドカードやデジタルギフトカードを利用した支払い方法も増加しており、これらは利用者の身元確認を回避する手段として悪用されるケースがあります。さらに、一部の決済プラットフォームは規制が緩やかな地域で運営されており、法的な監視が及びにくい状況を作り出しています。

  • 規制が不十分な国や地域の存在日本の規制が及ばない国のサーバーを利用するオンラインカジノが多数存在している。これらの国々に対して、日本から利用者情報の追跡や開示請求を行うことは法的・制度的に難しい場合が多く、実際に追跡が困難です。また、運営元が匿名化技術や複数国にまたがるインフラを使用している場合、管轄権の範囲が曖昧になり、取り締まりの実効性が低下するリスクも存在しています。

 

 

2. オンラインカジノとマネーロンダリングの関係

マネーロンダリングの典型的な手段

海外では合法のオンラインカジノがあるため、下記手段でマネロンを行っているケースがあります。

  • 入金した資金を賭博に使用:カジノで賭けた金額を、出金時に「別の源泉からの利益」として出すことが可能です。以下にその流れを説明します。

    • 現金や仮想通貨などの不正資金をオンラインカジノのアカウントに入金します。この際、仮想通貨やプリペイドカードなど匿名性の高い決済手段を利用することで、資金の出所を隠します。

    • 入金した資金をオンラインカジノで賭けに使用します。カジノでのプレイ履歴は「正当なゲーム活動」として記録されるため、不正資金があたかも合法的な利益に変わったように見せかけることができます。さらに、意図的に小額の損失を発生させたり、特定の勝敗を装うことで、自然なゲーム活動を演出します。

    • 最終的に、賭けに勝利した金額を「ゲームで得た正当な収益」として出金します。この際、オンラインカジノが発行する取引履歴や収益証明書が利用され、資金が合法的に見えるようになります。
  • 分散投資を利用した「スマーフィング」:小額を複数回、あるいは複数のオンラインカジノに分散し、最終的には合法的な銀行口座に送金され合法的な利益に見せかけます。

運営側によるマネーロンダリングの手法

  • 運営者による資金の還流操作:オンラインカジノの運営者が、複数の銀行口座や決済プラットフォームを利用して、不正資金を合法資金に見せかけます。これには、収益を装う架空の取引を含むことがあります。

  • 仮想通貨の利用:仮想通貨を用いることで、資金の出所を隠す。運営側が仮想通貨取引所を通じてマネーロンダリングを実行するケースも報告されています。

  • プレイヤーデータの不正利用:運営者が架空のプレイヤーを作成し、大量の賭けを行わせることで資金を合法化する。

 

課題点

  • 匿名性と国際性:オンラインカジノは国際的なプラットフォームであり、規制の抜け道として利用される可能性が高いです。

  • 技術的課題:カジノサイトの匿名性が、マネーロンダリングの大きな要因の一つとなっています。

 

 

 

3. オンラインカジノに対する規制の現状と問題

国際的な規制


  • イギリス
    2017年に制定された「マネーロンダリング規則(Money Laundering Regulations 2017)」では、オンラインギャンブル事業者にもAML(マネーロンダリング防止)義務が課され、身元確認や取引監視が必須です。

  • アメリカ
    銀行秘密法(Bank Secrecy Act)や愛国者法(Patriot Act)により、オンラインカジノも金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の規制対象となり、監視が強化されています。

 

日本の対応状況

日本国内では、オンラインカジノの利用者や運営者に対する取り締まりが行われています。しかし、以下の点で課題が残されています。

  1. 利用者への取り締まり

    • 現行の対応
      オンラインカジノの利用が「賭博罪」に該当するとして、利用者が逮捕された事例があります。これは日本国内の法律が適用されることを示しており、利用者自身が法律を遵守する責任があります。取り締まりは容易ではないのですが、仮想通貨の追跡によりオンラインカジノのユーザを摘発することができたケースもあり、今後もこのような形で利用者を取り締まるケースが増えてくると思います。
      また、カジノ内通貨を電子マネーで個人間売買するケースも多く、個人売買するためのプラットフォームまでできている状況のため、電子マネーでの怪しい取引に関して、より注意深くモニタリングしなければいけません。
  2. 運営者への取り締まり

    • 捜査の現状
      日本国外に拠点を置く運営者に対しては、日本の法律を直接適用することが難しい場合があります。これにより、運営者が匿名性の高い技術や分散型プラットフォームを悪用するケースが増加しています。
  3. 必要な対策

    • 法律の整備
      明確なオンラインギャンブル規制法の制定が必要です。これにより、オンラインカジノに関連する行為を包括的に規制し、罰則を強化できます。

    • 国際協力の強化
      FATFの推奨に基づき、国際的な協力体制を強化し、情報共有プラットフォームの構築や相互監視の枠組みを整備する必要があります。

    • 技術的対応
      AIやデータ解析を活用したリアルタイムモニタリングシステムの導入により、違法な資金フローの早期発見を目指します。

 

 

4.最後に

オンラインカジノは、技術革新と国際化により利便性が高まる一方で、マネーロンダリングやその他の犯罪行為の温床となる可能性があります。日本においては、現行の法律や規制の枠組みでは対応が追いついていない部分が多く、国際的な基準に基づいた態勢の強化が急務です。

また、規制強化だけでなく、技術革新を活用したモニタリング態勢や、利用者への啓発活動も重要な役割を果たします。これらの対策を通じて、オンラインカジノを取り巻く問題の解決に向けた第一歩を踏み出す必要があります。

仮想通貨取引所や金融機関、決済代行業者に関しては特に取引に対して高いアンテナを張ることが必要です。さらに各業界が横断的に情報を共有することで、不正取引や犯罪行為の早期発見と対策が可能になります。例えば、不審な取引データやリスクパターンを相互に共有することで、効果的な監視網を構築することができます。

これらの施策と規制強化を組み合わせ、利用者や業界全体への啓発を進めることで、マネーロンダリングへの対策を実現することが求められます。

 


 

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