FATF

2026年度の各省庁のマネロン対策に関する取組み

FATF第5次対日相互審査に向け、2026年度のマネロン対策は重要な局面を迎えています。本稿では、組織再編やシステム構築を急ぐ金融庁を中心に、サイバー対策を担う経済産業省、不動産取引の有効性を高める国土交通省など、各省庁の最新施策を解説。官民連携による日本全体の対策強化の動向を整理します。


2027年の書類審査、そして2028年のオンサイト審査に向け、いよいよFATF第5次対日相互審査が現実的なスケジュールとして迫ってきました。こうした中、2026年度のマネロン対策は、これまで以上に重要な局面を迎えています。 
今回の審査では、単なる制度整備の有無だけでなく、その運用がどれだけ実効性を伴っているか、すなわち「有効性」が問われる段階に入ります。このため、2026年度の取組はもちろんのこと、直近数か年にわたる各主体の対応状況も含めて総合的に評価されることになります。 

本稿では、こうした背景を踏まえ、2026年度における各省庁のマネロン等対策に関する施策動向について解説します。  

 

目次 


金融庁 ―金融犯罪対策室を軸に組織を強化― 

経済産業省 ―サイバー対策を通じた間接的な強化― 

国土交通省 ―不動産取引におけるマネロン対策の実効性向上― 

さいごに 

 


金融庁―金融犯罪対策室を軸に組織を強化― 


2026年度の金融庁予算は総額246億円(前年度比+7.4億円)です。そのうち主な政策的経費として「金融機能の更なる発揮と金融システムの公正性・安全性の確保」に9.1億円が計上されています。この柱の一つが金融犯罪への対応および不公正取引規制の強化であり、マネロン対策関連費用の中核をなします。 

また、2026年夏には大規模な組織再編が予定されています。監督局を銀行・証券監督局と資産運用・保険監督局に分割するとともに、暗号資産・ステーブルコイン課や資金決済課を正式な課として設置するなど、デジタル金融の急拡大に伴う業界固有のマネロンリスクへの対応体制を強化する方針が示されています。 

さらに、2025年度補正予算を活用した具体策として、「不正利用口座に係る情報共有システムの構築に関する補助事業」がすでに開始されています。これは、預金取扱金融機関間で不正利用口座の情報を共有する仕組みを整備し、口座不正利用対策の高度化を図るものです。金融庁が公表した資料でも、SNS型投資詐欺やフィッシング詐欺など金融犯罪の多様化・巧妙化を踏まえ、個別金融機関だけで完結しない、官民一体での対応の必要性が強調されています。 

2026年度予算案および補正事業は、この問題意識を具体化する動きといえるでしょう。 


 

経済産業省―サイバー対策を通じた間接的な強化― 


経済産業省は、金融庁のように「金融犯罪対策」という独立した大規模予算を掲げているわけではありませんが、犯罪収益移転防止法上の特定事業者であるクレジットカード業者や郵便物受取サービス業者を所管しており、AML/CFTの観点から重要な役割を担っています。 

2026年度当初予算では、「産業サイバーセキュリティ強靱化事業」28億円、「サイバーセキュリティ経済基盤構築事業」23億円、「サプライチェーン・中小企業サイバーセキュリティ対策促進事業」2.2億円が計上されています。これらは直接的なマネロン対策費ではないものの、情報詐取やアカウント乗っ取りといった金融犯罪の前提行為を防ぐための基盤整備として位置付けることができます。 

 

 

国土交通省―不動産取引におけるマネロン対策の実効性向上― 

国土交通省は、宅地建物取引業者の監督官庁として、犯収法に基づき本人確認・記録保存・疑わしい取引の届出を義務付けています。不動産取引はマネロンの典型的な手口として国際的にも認識されており、FATFからも継続的な対応強化が求められてきた分野です。 

2026年2月の資料では、不動産業ビジョン2030の重点課題として「安全・安心な不動産取引の実現」を掲げ、その中で「不動産業におけるマネー・ローンダリング対策」が明示されています。特に、すべての宅建業者が2026年度中に自らの事業規模や経営体制に応じたリスク評価書の作成を完了させる取組が予定されており、制度の「有効性」を高める方向性が示されています。

また、同月には業界団体に対し、「リスク評価書の作成および疑わしい取引の判断基準の明確化」に関する事務連絡が発出されており、届出件数の増加を含めた運用レベルの底上げを図る意図が伺えます。 

さらに2026年3月には、文化庁から、国交省を通じて不動産業界団体に対し、宗教法人の売買に類似した取引による違法行為の助長防止に関する注意喚起が行われました。本来、宗教法人は文化庁の所管ですが、このように所管をまたいだ対応がなされている点は、省庁間連携による対策強化の一例といえるでしょう。 

 

 

さいごに

以上を踏まえると、2026年度のマネロン等対策は、金融庁が制度面・実務面の双方から正面に立って対応を進める一方で、他省庁がそれぞれの所管領域における周辺施策を通じて実効性を下支えする構図となっていることが伺えます。 

すなわち、単一の省庁による対応にとどまらず、関係省庁間の連携を通じて、我が国全体として金融犯罪・マネロン対策の強化が図られている点が、2026年度の大きな特徴といえるでしょう。 

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