実質的支配者

「金融庁マネロンガイドラインFAQ改訂とpKYC (Perpetual KYC)」について(2)


前号の私のブログ(CDLブログ第26号)では、2024年4月1日公表された金融庁「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂版(以下、FAQとしますの内容をご紹介しました今回の改訂は、当局の「形式的な要件順守から実効性の確保」を求める意図が表れています

画一的な対応を求めず、十分な情報収集とデータ分析を行い、その上でリスクが低いと判断されたものは、従来の積極的な対応を留保することが出来るというものです。

その流れは、現在グローバルで話題になっているpKYC(Perpetual KYC)」へ向かっていると感じています。今回は、そのpKYCとはどのようなものかご紹介します 

 

CDLブログ第26号_図1_金融庁マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインFAQ改訂
図1: 「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂版公表について 

 

pKYCとは 

Perpetualを辞書で調べると、「永久」、「終わりがない」、「絶え間ない」などの意味が出てきます。従来のKYC(know your customer)では、取引時確認を行い、リスク格付に応じて、一定の期間毎に継続的顧客管理として情報更新を行っていますが、Perpetual KYC (pKYC)では、常に顧客情報を収集、モニタリングを行い、情報の更新やリスクに変化があった場合に対応を行います。 

今回のFAQ改訂では、従来の画一的な継続的顧客管理から、実効性のある対応を求める内容になりました。十分な情報収集とデータ分析を行った結果、リスクが低いと見られる顧客については、従来の対応を軽減できる可能性があります。この流れは、グローバルで注目されているpKYCの方向性と一致し、将来的に日本においても、pKYCが主流になってくると考えています。 

従来のKYCとpKYCの違い 

従来のKYCとpKYCの違いについて、Comply Advantage社(米国)は、以下のようにまとめています。  CDLブログ第28号_図2_従来のKYCとpKYCの違いComply Advantage社ウェブページ(https://complyadvantage.com/insights/perpetual-kyc/)より引用、翻訳 

従来のKYCでは、ある時点でのリスクを見ていますが、pKYCでは、常に情報更新をしてモニタリングしながらリスクを見ています。これを見ると、pKYCの方がよりリスクを見逃がさない管理であると分かります。 

 

pKYCのメリット 

pKYCのメリットは以下のように考えられます。 

  • 金融犯罪の早期発見、発見率の向上 

常に顧客の変化をモニタリングしていますので、リスクを早期に発見することが出来ます。また、今まで見逃がしていた定期チェックの合間の一定期間内に行われていた犯罪行為も捉えられる可能性が高まります。  

  • 規制当局の要件順守 

当局による有効性ある対応の要求は、第5次FATF相互審査に向けて益々強まると思います。その中で、pKYCは、当局が求める有効性ある対応に沿ったものになっています。 

  • コスト削減・労力配分の適正化 

定期的なレビューの必要性と関連費用を削減し、収益性を高めることが可能になります。また、上表のように、担当者はすべての顧客に目を配る必要がなくなり、アラートがあったものに対応を集中することが出来るようになります。 

  •  ユーザエクスペリエンスの向上 

DM等の顧客調査は、金融機関側の負担も大きいのですが、調査を受ける顧客側の負担も大きくなります。特に実質的支配者のような情報は、顧客にとって積極的に開示したくない情報であり、また、複数の株主が存在する場合、顧客側で犯収法の要件を理解した上で、実質的支配者を特定することは容易ではありません。pKYCの導入により顧客へ情報提示を求める機会を減らすことにつながり、ユーザエクスペリエンスの向上が期待できます。 

 

pKYC導入の課題 

pKYCの課題は、海外では以下のように言われています。 

  • 標準化されたモデルがまだ存在しない 
  • pKYCを成功させるためには、顧客データが十分に揃っており、統合され、高品質である必要がある 
  • 伝統的なKYCからpKYCへの移行するためには、企業はリソース、社内支援者、強固なマネジメントが必要となる 

 

まとめ 

今回の金融庁マネロンガイドラインFAQ改訂の内容やグローバルの動向を見ると、pKYCは、今後日本企業にも広まっていくと考えます。一方で、最新の技術を使った管理を導入するには、企業の担当者にとって専門知識の習得、社内規定・運用の変更、社内上層部への説得などいくつものハードルがあるかと思います。

一気にこのハードルを乗り越えることは大変な困難が予想されますが、このような新しい取組みを進めていくには、最終形に向けて、まずはスモールスタートで、現状できる範囲で少しずつでも進めていくことが重要です。

最初の一歩は、ある特定の範囲でデータを収集、統合し、内容を見てみること(データ分析してみること)と考えます。もし具体的な進め方などご不明な点等がありましたら、お気軽に弊社へご相談ください。 

お問い合わせフォームへ 

 弊社では実質的支配者情報の取得など、継続的顧客管理に関する課題を解決するコンプライアンス・ステーション®️シリーズを提供しています。現在オンラインサービスの無償トライアルを実施中ですので、ぜひお気軽にお試しください。 

 

 

著者紹介

hiro

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

 富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)  

 

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