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【2023年3/10公表】FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(5)


 FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(5)

前号では、3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」から「12.追加的補助手段」についてご紹介しました。今号では「13. 情報へのアクセス」の内容を紹介します。 

CDLニュースレター第27号_図1

図1:FATF GUIDANCE ON BENEFICIAL OWNERSHIP FOR LEGAL PERSONS

ガイドライン全体構成 

以下は、ガイドラインの目次です。この中から今号では、「13. 情報へのアクセス」について見ていきます。 
1. はじめに  
2. 法人に関連するリスクの把握と評価 
3. 基本情報  
4. 実質的支配者情報  
5. 実質的支配者に対する多面的アプローチ  
6. 適切な実質的支配者情報 
7. 正確な情報 - 実質的支配者情報の検証手段 
8. 最新の基本情報および実質的支配者情報 
9. 企業アプローチに基づく企業の義務 
10. 登録簿アプローチ 
11. 法人の実質的所有者情報を取得するためのメカニズムと情報源:代替的メカニズムの特徴 
12. 追加的補助手段 ←前号、第29号で紹介 
13. 情報へのアクセス ←今号、第30号で紹介 
14. 無記名株式および無記名新株予約権の悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
15. ノミニーアレンジメントの悪用リスクを防止・軽減するためのメカニズム 
16. 制裁措置  
17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係←次号、第31号で紹介予定 
18. 関連する規制制度の適用性  
19. 国際協力 
 

13. 情報へのアクセス 
 
所轄官庁によるアクセス 

国は、所轄官庁が、公的機関や団体、または代替的メカニズムにより取得された基本情報と実質的支配者の情報に迅速かつ効率的にアクセスできるようにするべき
としています。そのため、所轄官庁は、どの公的機関、団体、代替メカニズムが適切、正確、かつ最新の基本情報と実質的支配者情報を保有しているか、またその情報にアクセスする方法について、十分理解しておく必要があるとしています。そして関連する情報を保有する当事者は、自らの開示義務を理解し、所轄官庁に全面的に協力することが求められています。 
 
公共調達の過程におけるアクセス 

国は、国レベルの公的機関及び(必要に応じて)その他の機関が、公共調達の過程において、法人に関する基本情報と実質的支配者情報に適時にアクセス可能にするために必要な権限を与えるべき
としています。 
 
以下は、この要求事項を実施するための検討事項です: 

a) フレームワーク:国は、国レベルの公的機関や、必要に応じてその他の機関が、契約に入札する法人(契約入札者)及び契約を授与された法人(契約受領者)の基本情報と実質的支配者情報に適時にアクセスすることを可能にする枠組みを策定するべきとしています。 
 
その例として次のようなものがあげられます。 
 
i. 契約入札者及び契約受領者が、自身の基本情報と実質的支配者情報を提供することを公共調達への参加要件にする。 

ii. 関連する公共調達の部門に、公的機関または団体が保有する契約入札者と受領者の基本情報、受益者情報(代替メカニズムや追加的補助措置による情報を含む)へのアクセスを可能にする。 

iii. 関連する公的機関が、公的に利用可能なその他の契約入札者及び受領者に関する基本情報と実質的支配者情報を利用することを可能にする。このような情報は、適切、正確かつ最新のものである必要がある。 
 
b) 運用: 運用上、関連する公的機関が、公共調達の過程において、基本情報と実質的支配者情報に関する情報源、またその情報にアクセスする方法について十分な知識を有していなければならない。国は、当事者が開示義務を理解し、適切、正確、かつ最新の情報への適時アクセスを容易にすることを確保すべきである。各国は契約受領者の実質的支配者情報を一般に公開することを検討できる。 
 
金融機関、DNFBPs、他国の所轄官庁、一般市民によるアクセス 

国は、金融機関、DNFBPs、また他国の所轄官庁に、自国の企業登録簿が保有する公開情報と、最低限、法人に関する以下のような基本情報にアクセス可能にすべき
としています。 

・会社名、設立証明、法的形態とステータス、登記住所、Basic regulating powers(例えば、覚書及び定款)、取締役リスト、税務識別番号または同等のもの 
 
国はまた、適切なデータとプライバシー保護措置のもとで、CDD義務の遵守を促進し、不一致報告等の補足的な検証努力を支援するために、金融機関とDNFBPsが法人に関する以下の追加情報に適時にアクセスできるようにすることを検討すべきであるとしています: 

i. 株主の氏名、各株主が保有する株式数および株式の種類、株主の登録簿 

ii. 登録簿(複数可)または代替メカニズムにおいて保有される実質的支配者情報、および追加的補足措置 
 
また、基本情報及び実質的支配者情報を一般公開することも検討することができるとしています。一般公開は、より幅広く多くの方による情報の照合を可能とし、クロスチェックにより情報の正確、適切、かつ最新性を保つことが出来るとしています。一方で、この一般公開は、欧州司法裁判所において無効との判決が下されており(CDLニュースレター第19号参照)、今後欧州がどのような対応を取るのか注目したいです。 
 
第19号ニュースレター (下記リンクよりご参照ください。)
EU司法裁判所がEU各国に実質的支配者名簿の公開を義務付ける第5次EU指令の規定を無効と判決  
 
アクセスコスト 

基本情報と実質的支配者情報へアクセスするための料金は、所轄官庁による情報への効率的かつ迅速なアクセスができるようにすべき
としています。やむを得ない事情がある場合を除き、所轄官庁や公共調達を行う公的機関等は、この情報に無料でアクセスできるようにすることが良いとしています。その他の利用者についても、情報を十分に利用可能とするため、アクセス料金は、システムの開発、維持に必要なコストをカバーできる範囲でなるべく低く設定することを勧めています。 
 
今号では、2023年3月10日に公表されたFATF「実質的支配者に関するガイドライン」の中の「13. 情報へのアクセス」について紹介しました。次号は、「17. 実質的支配者の義務と他の勧告(電信送金や仮想資産の要件)との関係」の内容をみていきます。FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容紹介は次号で最終となります。 
 
 
山崎博史

コンプライアンス・データラボ株式会社     
代表取締役、CEO     
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)     

富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。      

・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)     
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)      
・公認情報システム監査人(CISA)      
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)    

 

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