いつも本ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、今回の記事で第100号を迎えることができました。これまで継続できたのは、日々お読みくださる皆さまの温かいご支援とご関心のおかげにほかなりません。この場を借りて、心より御礼申し上げます。
これからも、「読みやすく、役立つ情報を丁寧に届ける」という原点を大切に、さらに AML/CFT分野における国内外の動向を引き続き深掘りし、皆さまの業務や判断の一助となる情報発信を目指してまいります。
本稿では、これまでご紹介してきたトピックを振り返り、AML/CFTを巡る主要な動きを再確認してみたいと思います。
▶ 香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」の公表
(第2、4、8、14、16号)
▶ 第2回FATF第4次対日審査フォローアップレポート公表(第6号)
▶ 米国FinCEN「実質的支配者報告制度」開始(第22、24号)
▶ 政府「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」公表(第32、35、40号)
▶ 日本、米国、シンガポールにおける行政処分(第64、85、87号)
▶ 2025年7月に成立した米国「GENIUS法」(第96号)
2023年5月に香港金融管理局から「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」が発表されました。その内容について、5回に渡り紹介しました。先日あるセミナーにて、ネット銀行でネットワーク分析を行っている事例を拝見しました。国内では、まだネットワーク分析を用いた金融犯罪対策は一般的ではありませんが、グローバルの動向をみると、今後国内でも取組みが進むと思われます。ブログの中ではいくつか具体的な事例も紹介していますので、ご参考ください。
香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」について(1)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20231013
香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」について(2)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20231027
香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」について(3)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20231124
香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」について(4)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240119
香港金融管理局「AML Regtech:Network Analytics (May2023)」について(5)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240202
2023年10月に2回目のFATF第4次対日審査フォローアップレポートが公表されました。勧告5(テロ資金供与の犯罪化)、勧告6(テロリストの資産凍結)、勧告8(非営利団体(NPO)悪用防止)、勧告24(法人の実質的支配者)、勧告28(DNFBPに対する監督義務)において、評価が1段階上がり、大幅な改善となりました。弊社でも注目している勧告24については、PC (Partially Compliant:一部履行)→LC(Largely Compliant:概ね履行)となり、合格水準となりました。一方で、フォローアップレポートでは、改訂前の勧告が基準となっており、第5次対日審査では、改訂後の勧告が適用されるので、さらなる取り組みが必要と、書かせていただきました。
FATF第4次対日審査フォローアップレポート(2023年10月)について
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20231110
2024年1月から米国にて、企業の実質的支配者情報の報告制度が始まりました。米国は実質的支配者情報の透明性について、欧州各国から後れを取っていましたが、一歩取組みが進んだ形になりました。一方で、報告された実質的支配者情報へアクセスできるのは、政府機関に限定されており、金融機関がアクセスするためには、顧客の合意が必要になっています。また、その後の紆余曲折を経て、2025年3月には本制度の適用範囲が米国外法人に限定されるなど大幅に縮小されてしまい、当初の期待通りに有効性を発揮できない懸念が出てきています。
米国FinCEN「実質的支配者報告制度」開始 について(1)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240315
米国FinCEN「実質的支配者報告制度」開始 について(2)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240329
2024年4月1日に金融庁「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂版が公表されました。リスクに応じた簡素な顧客管理(SDD)の必須要件が削減されたり、継続的顧客管理における情報更新頻度の柔軟化や、情報収集手段として「DM等」の文言が削除されたり、より柔軟性のある対応が可能になりました。一方で、柔軟性のある対応を取るには、有効性を伴ったリスクベース・アプローチの実施が必要になり、要件の緩和ではなく、より高度な管理を求められていると理解できます。以下ブログでは、海外で注目されているpKYCの流れと合わせてFAQ改訂について内容を紹介しています。
「金融庁マネロンガイドラインFAQ改訂とpKYC (Perpetual KYC)」について(1)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240412
「金融庁マネロンガイドラインFAQ改訂とpKYC (Perpetual KYC)」について(2)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240426
2024年4月17日に政府「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」が公表されました。
FATF第4次対日相互審査の評価レポートが公表された直後に政府は「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」を公表しました。その計画の多くは、期限が2024年3月に設定されており、第4次対日審査のフォローアップを意識したものになっていました。これからは、2028年に予定されているFATF第5次対日相互審査に向け対応を進めていかなくてはなりません。その第5次対日相互審査に向け、2024年4月から3年間の行動計画が策定されました。以下ブログでは、「IO.5 法人等の悪用防止」に対する行動計画を中心に内容を紹介しました。
政府「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」について(1)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240531
政府「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」について(2)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240621
政府「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」について(3)
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20240726
2024年12月に金融庁はネット銀行に対するAML/CFT体制不備に係る行政処分を公表しました。ブログ第64号では、当社金融庁出身の鈴木により、今後の留意点となりうる事項についていくつか整理をしました。また、ブログ第77号では、米国の金融機関のアンチ・マネーローンダリング態勢の不備に対する制裁金・罰金事情、第87号では、シンガポールにおけるマネロン事件を取り上げました。
AML/CFTに係る行政処分事例から見た留意点
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20250117
米国におけるマネロン態勢不備と当局処分について
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20250425
シンガポールのマネロン事件とAML強化の教訓
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20250711
米国で2025年7月に成立した「GENIUS法」は多業界に衝撃を与えています。暗号資産業界のほか、多くの米金融機関や小売業者がステーブルコイン発行の検討・準備を急速に進める中、FinCENはGENIUS法に則った新たなAML/CFT規制の準備に着手しています。基本的には、米国でステーブルコインを発行するPPSI(許可された支払用ステーブルコイン発行者)、および米国で流通するステーブルコインを発行する外国ステーブルコイン発行者に限定されますが、国際的なAML/CFT規制要件へ波及・影響することも少なからず想定され、私たちも注視していく必要があります。
GENIUS法下におけるAML/CFT規制枠組み
https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20250926
今回は第100号という節目にあたり、これまでのブログを振り返ってまいりました。
これまでご愛読いただきました皆さまには、改めて心より感謝申し上げます。
今後も、AML/CFTに関する有用な情報をタイムリーかつ丁寧にお届けできるよう尽力してまいります。 引き続き、末永いご愛読を賜れますと幸いです。
◆著者のご紹介
コンプライアンス・データラボ株式会社
代表取締役、CEO
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)
富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開。2021年4月CDLを設立し、現在に至る。
・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)
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