FATF第4次対日相互審査の評価レポートが公表された直後に政府は「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」を公表しました。その計画の多くは、期限が2024年3月に設定されており、第4次対日審査のフォローアップを意識したものになっていました。
これからは、2027-28年に予定されているFATF第5次対日相互審査に向け対応を進めていかなくてはなりません。その第5次対日相互審査に向け、2024年4月から3年間の行動計画が策定されました。今号では、その中から「IO.5 法人等の悪用防止」についてご紹介します。
IO.5 法人等の悪用防止
以下(表1)は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」の「IO.5 法人等の悪用防止」の部分の抜粋です。まず、前回の行動計画ではなかったのですが、FATF第5次相互審査を意識して、有効性の審査項目であるIO (Immediate Outcome)毎に大項目が設定されています。
表1:マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)より
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/20240417.html
法人等の悪用防止については、FATF40の勧告において、主に「10. 顧客管理」、「24.法人の実質的支配者」が関係しています。「24. 法人の実質的支配者」については、2022年3月にFATF全体会合での採択を経て、改訂されています。改訂の内容は、私の過去のブログ記事「FATF勧告24改訂の背景(https://c-datalab.com/ja/blog/compliancerisk_20220408)」もご参照ください。
第4次相互審査では、改訂前の勧告24が適用されていました。そのため、その後のフォローアップでも改訂前の勧告24の基準で評価が行われ、2023年10月23日に公表された「FATF第4次対日審査フォローアップレポート」では、勧告24の評価が、PC (Partially Compliant:一部履行)→LC (Largely Compliant:概ね履行)に改善されています。
しかしながら、FATF第5次相互審査では、改訂後の勧告24が適用されるため、それに合わせた対応が必要になってきます。大きなところで言うと、改訂後の勧告24では、多面的アプローチが必須となり、「企業アプローチ」、「登録簿アプローチ」、「既存情報アプローチ」の3つを「含むべき」となっています。(「3つのアプローチ」と呼びます。)
「3つのアプローチ」については、私の過去のブログ記事「FATF「実質的支配者に関するガイドライン」のドラフトの内容について」のシリーズ(1)〜(4)と【2023年3/10公表】FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について(1)〜(6)もご参照ください。
「FATF「実質的支配者に関するガイドライン」のドラフトの内容について」
【2023年3/10公表】FATF「実質的支配者に関するガイドライン」の内容について
今回の行動計画「IO.5 法人等の悪用防止」では、この「3つのアプローチ」が意識されています。この行動計画の内容については、次回の私のブログ記事で紹介します。
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著者紹介
コンプライアンス・データラボ株式会社
代表取締役、CEO
山崎博史(Hirofumi Yamazaki)
富士通、NTTデータにてERPや規制関連システムの企画、開発に従事した後、米国系コンサルティングファームにてリスクマネジメントに関するコンサルティングを多数の金融機関等へ展開。2012年米国Dun & Bradstreet社の日本法人に入社し、プロダクトマーケティング責任者として、リスクマネジメントやコンプライアンス関連製品の国内リリース及び販売を推進。2020年より東京商工リサーチに転籍し、ソリューション開発部長としてコンプライアンス分野を中心にソリューションを展開、現在に至る。
・公認グローバル制裁スペシャリスト (CGSS)
・公認アンチ・マネーロンダリング・スペシャリスト(CAMS)
・公認情報システム監査人(CISA)
・米国ジョンズ・ホプキンス大工学修士(MSE)
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