リスクベース・アプローチ

2024年CDLブログまとめ


このニュースレターは2021年9月13日、2022年1月25日、2022年10月27、2024年5月24日に開催された(株)東京商工リサーチ及びコンプライアンス・データラボ(株)の共催セミナー(ウェビナー)にお申し込みいただいたお客様、Webサイトより購読申し込みをされたお客様にお送りしています。配信停止をご希望のお客様は、お手数ですが本メールの末尾のリンクよりお手続きをお願いいたします。   

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今回は2024年度に公開したブログの中でも特に反響の高かったブログをおさらいしていこうと思います。

 

目次 

 

 

 

2023年腐敗認識指数(CPI) について

20241月30日に国際NGOの国際透明性機構=Transparency International (TI)が、2023年の腐敗認識指数(CPI)を公表しました。
今回のレポートによるとほとんどの国が公共部門への腐敗への取り組みに対して進展がないことが明らかになっています。
またアジア・パシフィック地域においては特に71%の国が地域平均と世界平均を下回っています。


昨今、様々な情報を分析しながらマネロンの対策をしていく中で、このようなCPIという指標も今後取り入れていくのもいいのではないか、というような記事をまとめています。

<引用記事>

CPI2023の全体概要 

CPI2023のアジア・パシフィック地域の動向



 

 

金融庁マネロンガイドラインFAQ改訂とpKYC (Perpetual KYC)について

2024年4月1日金融庁「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)」の改訂版(以下、FAQとします)が公表されました

具体的なポイントとして、下記にまとめます。

 

リスクに応じた簡素な顧客管理(SDD)*の適用対象

顧客リスク評価の結果、「低リスク」と判断された顧客のうち、一定の条件を満たした顧客について、顧客情報を更新するな どの積極的な対応を留保し、取引モニタリング等によって、マネロン・ テロ資金供与リスクが低く維持されていることを確認する顧客管理措置を行っているものをSDDといいますが、過去のガイドラインで記載されていたSDDの6つの要件のうち3つの要件が必須条件から外れたような記載内容となっていました。

 

継続的顧客管理のための情報収集手段 

以前のガイドラインではSDDの対象顧客に対して「DM等を送付して」という文言が記載されていましたが、今回のガイドラインにおいてこのような文言が削除されています。
多くの金融機関でDMの回収率が20~30%となっている効率が悪い状況を鑑みてDMに限らない有効性のある情報収集が求められるようになったと考えられます。

 

継続的顧客管理の情報更新頻度について 

情報更新の頻度については、「一般的には、高リスク先については1年に1度、中リスク先については2年に1度、低リスク先については3年に1度といった頻度で情報更新を行うことが考えられます。」とされていました。

改訂後のFAQでは、同様に上記の頻度が例示されているのですが、「なお、この例に限らず情報更新の頻度を決定することも考えられます。」との文言が追加されています。そして、上記の例に限らず情報更新の頻度を変える場合は、以下の対応を行うことが必要とされています。 

・全顧客のリスク格付を行う
更新頻度の妥当性を検証
・定期的に更新頻度の妥当性に問題がないことを検証 

 

pKYCの取り組み

今回のFAQ改訂では、従来の画一的な継続的顧客管理から、実効性のある対応を求める内容になりました。十分な情報収集とデータ分析を行った結果、リスクが低いと見られる顧客については、従来の対応を軽減できる可能性があります。この流れは、グローバルで注目されているpKYCの方向性と一致し、将来的に日本においても、pKYCが主流になってくると考えています。 

pKYCとは常に顧客情報を収集、モニタリングを行い、情報の更新やリスクに変化があった場合に対応を行うものであるため、下記のようなメリットがあります。

pKYC導入のメリット

  • 金融犯罪の早期発見、発見率の向上 
  • 規制当局の要件順守 
  • コスト削減・労力配分の適正化 
  • ユーザエクスペリエンスの向上

ただメリットがあるうえで当然デメリットもあります。

pKYC導入のデメリット

  • 標準化されたモデルがまだ存在しない 
  • pKYCを成功させるためには、顧客データが十分に揃っており、統合され、高品質である必要がある 
  • 伝統的なKYCからpKYCへの移行するためには、企業はリソース、社内支援者、強固なマネジメントが必要となる 

このように今回のFAQ改定において、様々な金融機関が柔軟かつ高度なリスク管理を求められてきている中でより精度が高く、そしてコストを削減しながらリスクに対してアプローチしていくことが求められています。

<引用記事>

 

 

 

米国FinCEN「実質的支配者報告制度」開始 について

2024年1月1日から米国にて、企業の実質的支配者情報の報告制度が始まりました。

本制度は、2021年に制定された企業透明化法(CTA)に基づいており、米国で事業を行う企業に対し、最終的にその企業を支配、所有する個人(実質的支配者)をFinCENに報告することを求めるものです。 

本制度では報告義務の対象・報告内容・報告期限・実質的支配者情報にアクセスできる人が定められているので簡単にまとめます。

報告義務の対象

  • 国内報告会社
  • 外国報告会社
  • 免除対象の会社・団体など

報告内容

  • 個人の氏名 
  • 生年月日 
  • 居住地の住所 
  • パスポートや米国の運転免許証など、受理可能な身分証明書の識別番号と、身分証明書の発行州または法域の名前 

報告期限

下記3つのパターンが存在します。

  • 2024年1月1日以前に設立された企業:2025年1月1日まで 
  • 2024年1月1日以降、2025年1月1日より前に設立された企業:設立または登録の通知を受けてから90日以内 
  • 2025年1月1日以降に設立された企業:会社の設立または登録が有効であるという実際の通知または公告を受けてから30暦日以内に 

実質的支配者情報にアクセスできる人

  • 連邦政府
  • 州政府
  • 地方政府
  • 部族政府当局者
  • 米国連邦政府機関を通じて要請を提出した特定の外国政府当局者
  • 特定の状況において、報告会社の同意を得た金融機関

その他、FinCENにおける実質的な支配や所有権というような単語の定義についても後半の記事で解説しているので是非ご覧ください。

<引用記事>

 

 

政府「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」について

FATF第4次対日相互審査の評価レポートが公表された直後に政府は「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」を公表しましたその計画の多くは、期限が2024年3月に設定されており、第4次対日審査のフォローアップを意識したものになっていました。

これからは、2027-28年に予定されているFATF第5次対日相互審査に向け対応を進めていかなくてはなりません。その中でも令和7年度末、令和8年度末に設定されている法人等の悪用防止という内容にフォーカスを当てました。

法人等の悪用防止 

法人等の悪用防止に関して、FATF40の勧告において、主に10. 顧客管理」、「24.法人の実質的支配者」が関係しています。しかしながらこの「24.法人の実質的支配者」については2022年3月にFATF全体会合での採択を経て、改訂されています。

FATF第5次相互審査ではこの改定後の内容が適用されるため、それに合わせた対応が必要となります。
改定後の「24.法人の実質的支配者」では多面的アプローチが必須となり、「企業アプローチ」、「登録簿アプローチ」、「既存情報アプローチ」の3つを含むべきだとされています。

企業アプローチ

企業アプローチは、「法人自身に、自らの最新の実質的支配者を把握、保持させる」というアプローチです。

イギリスなどでは、法人が自身の実質的支配者情報を把握、保持する義務を課せられていますが(その情報を登録簿への登録、変更があった場合の更新の届出も義務化されています)、「重要性を周知する」とのことで、この期間中義務化まではされない、と推測できます。

登録簿アプローチ

日本の登録簿アプローチの1つである、実質的支配者リスト制度に関する内容です。

現在、実質的支配者リスト制度に登録された情報は、登録した当該企業のみが自社のリストの取得が可能になっており、金融機関等は、直接取得が出来ない制度になっています。この行動内容を見ると、金融機関等により直接取得が可能になるように検討がされるとのことです。

既存情報アプローチ

特定事業者が保持する実質的支配者情報を十分、正確、最新な状態に保つための措置を行うとともに、当局による当該情報への効率的なアクセスを確保する仕組みを検討し、導入するというような内容です。記載されており、金融機関等と当局の情報連携の仕組みが今後具体化されることが推測されます。 

また、公証人が定款認証を通じて保有する実質的支配者情報への当局による照会についての対応を一層迅速化すると記載されているように多面的アプローチの1つとして、定款認証の情報を活用していく意図が見られます。 

<引用記事>

 

 

マネーロンダリング事犯における業態別の危険度評価

警視庁が公表する令和5年「犯罪収益移転危険度調査書」に基づき、各業態の商品・サービスの危険度について紹介しています。

危険度の高い順番に簡易的に説明していきます。

預金取り扱い金融機関 

マネロンに悪用された取引の大半は内国為替や現預金取引など、預金取扱金融機関が取り扱うものであることから、金融庁によるとマネロンリスクは他の業態よりも高いと認められると評価されています。

最近の報道によるとSNS上で法人口座の売買を呼びかける投稿が相次いでおり、当局や金融機関が警戒を強めているとのことです。その売買価格は個人口座の数倍から数十倍になるとされており、送金限度額が多いことや口座開設時の審査が厳しく出回る数が少ないことが影響しているとされています。

資金移動業者

資金移動サービスは、低コストで迅速な送金サービスが可能となっており、多くの利用者にとって利便性が高い反面、その利便性がマネーロンダリングのリスクを高める要因となっています。その他にも大口の不正資金を小口にしやすいこと、グローバルのネットワークがあることで資金の追跡を難しくできることから、警視庁の犯罪収益移転危険度調査書によると危険度は高いとされています。 

直近では、大手資金移動会社が1回あたりの送金上限額を10万円から30万円にすることで利用者の利便性を高めていますが、それと同時に送金時の本人確認や取引目的の確認の強化をしていくべきだと考えられます。 

暗号資産交換業者

日本では、2017年に施行された改正資金決済法により、暗号資産交換業者に対する規制が強化されました。登録制の導入や、財務規制、行為規制、監督規制、マネーロンダリング規制が導入され、暗号資産交換業者への監視が厳しくなっています 

また、疑わしい取引件数が年々増加する一方、マネーロンダリングに悪用された件数は比例して伸びていないことから、犯罪者がより巧妙な手口で追跡を逃れている可能性があります。 

暗号資産は、高い匿名性や迅速な取引、グローバルなアクセスといった特徴から、マネーロンダリングのリスクが高い業種です。このリスクを軽減するためには、厳格なKYC(顧客確認)、取引のモニタリング、疑わしい取引の報告、内部統制の強化、国際協力が必要です。

保険会社

契約満了前に中途解約を行った場合にも高い解約返戻金が支払われるような保険は特に注意が必要だとされています。

また様々な商品があるためルートが増えてしまうことも危険度が高い要因だとされています。

金融商品取引業者

株式の売買を通じて多額の資金を転換できることや、複雑な仕組みの金融商品を購入して資金の出所を不透明にできることから危険度が高いとされています。

金融庁「マネー・ローンダリング等対策の取組と課題(2024年6月)」によると非対面チャネルを通じた取引が増加しているために、第二種より第一種金融商品取引業者の方がリスクが高いとしております。特に第一種金融商品取引業者においては非対面取引における危険度低減措置の実行が重要になると考えられます。 

クレジットカード事業者

犯罪収益を現金で取得した者がクレジットカードを利用して当該現金を別の形態の財産に変えることができることから、犯罪収益の追跡可能性を低下させる恐れがあります。また、自身のクレジットカードやその番号を第三者に共有することで、第三者に換金性の高い商品を購入させる等、事実上の資金移動を国内外問わず行うことが可能です。 

クレジットカードはその性質上、必ずしも所有者本人でなくとも決済利用できることから、入会・更新時の審査の厳格化(実質的支配者の確認含む)だけでなく、取引モニタリングにおけるなりすまし防止措置が必要です。実際に、各事業者はなりすまし防止のためのワンタイムパスワードの導入やAIを活用した利用者の行動履歴分析、取り締当局の定期的な意見交換など自主的な取り組みを推進しています。

宅地建物取引業者

不動産は、財産的価値が高く、多額の現金との交換を容易に行うことができるほか、その利用価値、利用方法等によって大きく異なった評価をすることができることから、通常の価格に金額を上乗せして対価を支払うなどの方法により容易に犯罪収益を移転することが可能です。これらのことからマネーロンダリングの温床となりやすいと考えられますが、実態として疑わしい取引件数は他業態と比較して非常に少ない件数となっております。

近年では、資産の保全又は投資を目的として不動産が購入される場合も多く、国内外の犯罪組織等が犯罪収益の形態を変換する目的で不動産取引を悪用する危険性もあります。これらを踏まえて、顧客の属性や実質的支配者(法人の場合)や資産状況等を総合的に加味したリスク対応措置を取ることが重要です。

<引用記事>

 

 

 

まとめ

今回は2024年度に公開したブログの中でも特に反響の高かったブログをおさらいしましたがいかがでしたでしょうか。
今後もより読者の方にわかりやすく読んでもらえるような記事を書いていこうと思っておりますので是非期待していただけたらと思います。

 

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